第5話(選挙【苦】自衛隊)
五話(選挙【苦】自衛隊)
避難所各地を住民投票の投票所とした選挙管理委員会は自衛官に警護されながら各避難所に選挙の説明会を開き投票への理解を求めた。
住民も不安と不満が入り交じった感情の中で行き場のない怒りにも似た憤懣を抱えていた。
そこへ『札幌独立政府承認可否に関する住民投票』というわかりやすい目的が示されたのだ。
「承認の可否って言っても承認されなかった場合の説明がねぇな」
鋭いところを突いている中年男性の指摘の通り住民投票の形をとっているものの選択肢を与えているようで実際は一択である。そして、何事もなく三日間の思考時間を経ていよいよ住民投票が始まった。この間も警備・警護・治安維持等警察組織が果たすべき役割も自衛隊が務めざるを得なかった。北海道警は時空転移に巻き込まれていなかったようだ。
「自衛隊さんも本来の仕事からかけ離れたことばかりで大変だな」
「それも仕事でしょ。特別職国家公務員なんだから」
「自衛隊の負担軽減も兼ねて自警団を作ろう!」
そう言いだしたのは内藤優馬<ナイトウユウマ>だ。
「悪くないんじゃない?現行犯しか対応できないけどね」
そう返したのは君塚令佳<キミヅカレイカ>だ。
二人の考えに賛同する人物が一人、二人と現れてまたたく間に総勢は数100人規模の大所帯になった。
こうして自衛隊負担軽減を目的の一つとした警備雑務補助を目的とした『札幌地域安全見守り補助隊』が発足したのである。このことにより選挙を苦にする自衛隊は大いに救われたのであった。
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