第13話 男子高校生、さらにわからせる
「行きますよ」
新五郎が構えた。魔力の高まりを感じ、雷斗の口元がゆるむ。
新五郎が思い通りに動いてくれたので、雷斗は感謝する。
「これが召魔術だ! 現れろ、狂骨河童!」
新五郎の前に黒い歪みのようなものが生まれ、骨化した大きな河童が姿を現す。
鳥のような嘴をカラカラと鳴らし、眼窩の中にある闇の中で、黒い炎が揺れる。
「ふふっ、怖いだろ」と新五郎は眼鏡をくいっと上げた。
「狂骨と河童の組み合わせだ。こいつは強いぞ」
雷斗は鼻で笑い、構える。今のでこの召魔術の仕組みが分かった。そして、彼らがやっていることは、雷斗も再現できるものだった。
「じゃあ、俺は、狂骨――閻魔でも召喚しようかな」
雷斗は召魔術を発動する。すると、雷斗の前で黒い炎が燃え上がり、道服を着た骨が現れた。鋭い牙を持ち、角も生えている。棍棒を担ぎ、眼窩の黒い炎を激しく滾らせた。
「なななっ」と新五郎の唇が震える。
「お前も召魔術が使えるのか!?」
「怖いだろ?」
雷斗はギャラリーにも視線を走らせる。愕然とした表情の面々が並ぶ中、唯奈だけは確信した表情で頷く。
「だ、だが、実力はどうかな? いけぇ、河童!」
狂骨河童が狂骨閻魔に襲い掛かる。
――が、閻魔の一振りで狂骨河童はバラバラになった。
「くぅ。まだだ!」
新五郎が力を込めると、バラバラになっていた骨が集まり、狂骨河童はその姿を取り戻した。
「もう一度だ。いけぇ!」
狂骨河童が再び狂骨閻魔に飛び掛かった――が、やはり狂骨閻魔の一振りで狂骨河童は散る。
「く、くそ」
新五郎が再び狂骨河童を再生させようとする。しかし、狂骨閻魔がそれを許さず、金棒を叩きつけて、粉々にした。
さらに狂骨閻魔は新五郎の前に立ち、唖然とする新五郎へ見せつけるように金棒をちらつかせた。
「ははっ、ちょっと待て。少し話し合おうじゃないか」
狂骨閻魔が棍棒を振り、新五郎は吹っ飛んだ。
雷斗は厳仁斎に向きなおる。
「これで、わかっていただけましたか?」
「う、ぐぅ」
「それとも、まだやりますか?」
厳仁斎の後ろにいる面々に視線を走らせると、全員、尻込みした。新五郎への対応を見て、怖気づいたようだ。
「これでわかったでしょ、お爺様」
「ぐぬぬぬっ」と歯ぎしりをする厳仁斎であったが、あることに気づいて、にやりと笑う。
「そもそもこれは、唯奈が召魔術ができるかどうかの話だったはずだ。もしも、お前が使えるんだとしたら、今、ここでやってみろ」
「え。いや、照栖君が」
「それはわかった。ただ、わしはお前が召魔術を発動しているところが見たいんだ」
「え、あ、それは……」
「それなら問題ないですよ」
雷斗の言葉で、雷斗に視線が集まる。
「何?」
「唯奈さんは召魔術が使えますよ」
「馬鹿な。こいつは使えない」
「百聞は一見に如かず。今から、それをお見せしましょう」
雷斗は不敵に笑った。
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