第12話 男子高校生、わからせる

 唯奈の許嫁であるスキンヘッドの男――清丸とのタイマンは家の庭で行われることになった。


 雷斗が言われるまま、庭に出ようとしたら、唯奈に手を引かれた。


「わかってると思うけど、あいつをボコボコにしちゃって」


 と戦う前に、唯奈に言われた。


「わかってる。任せて」


 雷斗は庭に立ち、清丸と対峙した。他の面々は軒下に立って、二人の様子を見ている。


「ふふっ、謝罪するなら今のうちだぜ」


 清丸は指の骨を鳴らすが、雷斗は鼻を鳴らした。


「まぁ、さっさとやりましょう」


 清丸が目配せすると、厳仁斎が頷き、「それでは、はじめぇい!」と叫んだ。


 清丸が駆け出す。


 二の腕の筋肉を隆起させ、雷斗を狙った。


 雷斗は体を引いて、その攻撃を避けると、足を引っかけて、清丸を転ばせた。


「ぐぬぅ」と清丸は前のめりに倒れる。


 雷斗は呆れ顔で言った。


「そんな攻撃じゃ俺には当たりませんよ」


「舐めるなよ、小僧。今すぐ、その生意気な面を涙でぐしゃぐしゃにしてやる!」


 清丸が再び殴りかかってきた。が、やはり雷斗にとっては、そこまで驚異的な攻撃ではない。だから、身を引き、再び足を引っかけて、転ばせた。


 清丸は膝を立て、「ぐぬぬぬ」と恨めしそうに雷斗を睨んだ。


「だから、そんな攻撃は、俺に通用しません」


「そいつは……どうかなっ!」


 それから清丸は、何度も肉弾戦による攻撃を繰り出してきた。


 雷斗は呆れながらその攻撃をかわし、肉弾戦が無駄であることを伝えるも、清丸は諦めなかった。


 それで痺れを切らした雷斗は、苛立ちを滲ませて言う。


「いい加減、召魔術ってやつを使ったら、どうなんですか?」


「ほぅ。召魔術を知っているか。しかし、俺は見せんぞ」


「なぜ」


「貴様に見せるまでも無い」


「……そうですか」


 清丸が頑固者で、これ以上付き合っても、時間を無駄にするだけであることを悟った雷斗は、さっさとこの茶番を終わらすことにした。


 清丸が殴りかかってきたとき、一瞬でその懐に潜り込むと、まずはみぞおちに一発。


 次に下腹部へ一発。


 清丸の体がくの字に折れたところで、顔面に拳を叩き込んだ。


 清丸は声を出すことすらできず、ごろごろと地面を転がり、壁にぶつかって気を失った。


 静寂。


 その静寂を破るように、唯奈が歓喜の声を上げる。


「ほら、だから言ったでしょ! 彼は、私が召喚した英霊なんだ!」


 厳仁斎は歯ぎしりをする。想像していなかった時代のようだ。清丸を睨みつけ、唾を飛ばす。


「おい、清丸! 何をしてるんだ!」


 しかし、気を失っている清丸に、その言葉は届かない。


「さぁ、これでお爺様もわかりましたよね?」


「く、くぅ」


「ちょっと待ってください」と眼鏡を掛けた生真面目そうな男が進み出る。


「彼の相手は私に任せてください」


「新五郎。お前がやってくれるのか?」


「ええ、もちろん。ただし、条件があります。もしも私が勝ったら、唯奈さんとの結婚は私が」


「そんなことか。認めてやる。だから、あいつをやってしまえ」


「な、また勝手に!?」


「ふふっ、任せてください」


 新五郎は眼鏡をきらりと光らせて、庭に降り立った。


 雷斗は新五郎と対峙し、にやりと笑う。


 彼なら召魔術を使ってくれると思ったからだ。

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