第10話 男子高校生、知る

 ――夜。


 雷斗は俊介とともに、客間に引かれた布団に眠っていた。


 真紀は唯奈の部屋で休んでいる。


 俊介とは、同性と言うこともあって、この一日でだいぶ仲良くなることができた。


 その俊介が、血相を変えて戻ってくる。


「どうしたんだ?」


 雷斗が冷静に質問すると、顔色の悪い俊介が、唇を震わせながら答える。


「で、出た」


「……何が?」


「お化けだよ。お化け」


「お化け? どこで出たの?」


「具体的な場所はわからないんだけど、トイレから帰ってくる途中に、何か提灯みたいなものが宙に浮いていたんだ」


「ふーん」


 雷斗が立ち上がると、俊介は「お、おい」と呼び止める。


「行くのか?」


「ああ。この目で確かめてみる」


 雷斗は廊下を歩きながら魔力を探った。確かに、魔力の気配がある。その気配に向かって歩いていくと……宙に浮かんでいる提灯に遭遇した。


 提灯には目と口があった。雷斗を認めると、舌を垂らしながら接近してくる。それで雷斗を驚かせているようだった。


 しかし雷斗が、その提灯に驚くことは無かった。


 提灯を両手で挟むと、【光学分析スキャン】を発動し、その構造を探る。


(……なるほど。こういう感じか)


 雷斗が納得したところで、角から一人の少年が飛び出てきて、雷斗を睨んだ。


「ちょうすけを放せ!」


「ちょうすけ? ああ、この子のことね」


 雷斗が提灯から手を放すと、提灯は涙目になって、少年のもとに戻った。


 少年は慰めるように、提灯を撫でた。


 雷斗は少年をまじまじと観察する。その少年には見覚えがあった。唯奈の弟だったと思う。


「その提灯は、君が召喚したの?」


「ん? あぁ、そうだけど……。あんたはこれが怖くないの?」


「まぁね。それより、そいつを召喚した召魔術とやらを見せてよ」


「は? なぜ、召魔術のことまで。あんたは一体……」


「唯奈さんの使い魔の英霊かな」


 少年は訝し気に目を細めると、提灯を連れて、どこかへ行ってしまった。


「あ、ちょっと」


 雷斗は困ったように頬を掻く。本音を言えば、詳しく話を聞きたかった。


(……まぁ、いいや)


 あの提灯を分析しただけで、ある程度、召魔術の正体がわかった。


(でも、憶測で決めるのは悪いし、もう少し調査するか)


 雷斗はそんなことを考えながら、客間へ戻った。

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