第08話 男子高校生、到着する
――金曜日。
唯奈との待ち合わせ場所に向かうと、まだ来ていなかった。
(十分くらい早く来たしな)
心の中でよくわからない言い訳をしていると、五分くらい経ってから唯奈がやってきた。
「ごめんね。お待たせしちゃって」
「いや、大丈夫。俺も今来たところだから」
雷斗は、自分がそんなことを美少女に言えるとは思っていなかったから、口元がにやける。
しかし、唯奈の後ろに、唯奈の友人と思しき人たちがいることに気づき、表情が硬くなった。
「その人たちは?」
「友達。真紀と真紀の幼馴染の俊介君」
「はじまして! 真紀です」
「俊介だ。よろしく。男同士、仲良くやろうぜ」
突然現れた美男美女に雷斗は戸惑いつつ、挨拶を返す。
「……よろしく。雷斗です」
二人の隣でニコニコしている唯奈を手招き、雷斗は声を潜めて話す。
「あの人たちは何で連れて行くの?」
「クソジジイも私の友達がいたら、下手に手を出せないと思ってね」
「大丈夫なの?」
「うん。だって、私には優秀な使い魔がいるもの。期待しているよ、照栖君」
唯奈はウインクすると、真紀たちの元へ戻った。
(俺頼みかよ……)
雷斗は困惑しつつも、頼られていること自体は悪い気がしなかったので、とりあえず、不満の言葉は飲み込む。
二人くらいなら守れる自信があるし。
そして四人は、新幹線に乗って、唯奈の地元がある最寄り駅まで移動する。
雷斗は、自分以外の三人のキラキラした雰囲気に場違い感を覚えつつ、駅に到着するまで何とかその場の空気に合わせた。
最寄り駅に到着してからは、タクシーで移動することになった。
唯奈が「〇〇トンネルまで」と言うと、タクシーの運転手の顔色が変わった。
「どうして、あそこに? あそこは遊びで行くような場所ではないが」
「実家があるので」
「……ああ、そうでしか。すみません」
タクシー運転手の恐縮した態度が気になったものの、雷斗はタクシーに乗り込んで、そのトンネルの前まで移動する。
駅から車で三十分くらいか。山中にあるそのトンネルは石で作られていた。年季があり、おどろおどろしい雰囲気がある。タクシーも四人を下すと、逃げるように引き返して行った。
その雰囲気に、真紀や俊介も息を呑む。
「この先に、唯奈の実家があるの?」と真紀。
「うん。一応」
雷斗はトンネルの奥を眺め、目を細めた。トンネルの奥から魔力めいたものを感じる。これは、想像していた通り、面白いことになりそうだ。
唯奈を先頭に、ビビった様子の真紀と俊介が続き、雷斗が最後尾を歩く。
トンネルを抜けると、目の前に太陽の光を跳ね返し、きらめいている湖面があった。その周囲を緑が囲んでいるものの、開けた場所には家屋が建ち並んでいる。
かなり自然を感じることができる風景に、真紀や俊介の表情が和らぐ。
「何だ。思っていたよりも良さそうな場所じゃん」
「うん。まぁね。風景だけは私も好きよ」と言って、唯奈は三人に微笑みかけて言う。
「ようこそ。『女美村』へ」
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