其ノ八 さと姫

 有明の姫君は、皆を一旦避難させた曲輪くるわの隅の方に有る火防屋敷かぼうやしきに向かおうとしました。しかし、その時に御座います。


「あ、さと姫、そっちへ行っては駄目!」


 見た事のない炎と煙に驚いた、姫の愛猫あいびょうのさと姫が、姫の腕の間をすり抜けて、学問所へ続く近道の石段の方に逃げて行き、石段を掛け降りて行ったので御座います。


「さと姫! さと姫!」


 心優しい姫君は、危ないとは思いながらも、さと姫を見捨てる事は出来ず、学問所への近道の石段を、猫を追って駆け降りて行きました。



明日に続く


 

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