其ノ三 舞

「そうか? 俺は興味津々きょうみしんしんだがな。藩主様の国元くにもとの独身の姫君たちと言えば、五の君か? 六の君か? とにかく美人揃いと聞く。もしかしたら一目ひとめもじが叶うかも知れない。

 花の盛りに美しい姫君達に見つめられながら詩文しぶんむ。ああ、あれだ、源氏物語のはなえんじょうみたいじゃないか」


 とどろきがそう言うのを聞いて、春庭様が、

「あの帖は確か朗詠ろうえいだけじゃ無くて、まいも舞うんだよ? お前、舞えるのかよ」

 と笑って仰ると、とどろきは、

「舞えるさあ、花のように美しい姫君たちの御前おまえで、この俺様のつるぎまいをお目に掛ける!」

 と騒いで竹刀しない大小だいしょうを取り出し、立ち上がってどったんばったんと、見た事のない奇妙なまいを踊り始めました。




明日に続く

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