夢見る小学生、勇人

「ドーはドーナツのド!レーはレモンのレ!」

「勇人くん歌上手だね!みんなも勇人くんみたいに元気に歌ってね」


僕の名前は、勇人小学2年生。

今は、音楽の時間でみんなの前で歌を歌っている。

それは僕が歌が上手いという理由でみんなのお手本として歌っていた。

みんなの前、すなわち教卓からの景色はとてもよく心地よい気分で歌えた。

そして、クラスのみんなが拍手してくれる。

この景色は新鮮だった。


■■■


「勇人、お前スッゲー歌上手いな!」

「本当!?」

「うん、勇人はやっぱりプロなれるって」

「そうかな笑」


みんなが、僕の歌を褒めてくれる。

それが、すごい嬉しくて、自信につながって毎日が楽しかった。


■■■


「今日は、みんなの夢を発表しましょう!」


僕の担任の先生は、授業が始まるとそう言った。

5限の授業は、みんなの夢を発表してそれについて意見する授業だった。


「じゃあ、愛香さんから夢を発表していって」


愛香さんの夢か…。

気になるな…。

そう、僕は密かに愛香さんに恋心を抱いているからだ。


「私の夢は、素敵な旦那さんと結婚して素敵な家庭を作ることです」


「パチパチ」


みんなが拍手をする。

結婚か…。愛香さんは将来どんな人と結婚するんだろうか…。

でも、愛香さんはモテるからきっとかっこいい人と結婚すんだろうな…。

そして意外と普通の夢だったな…。


「僕の、夢は医者になってみんなの命を救うことです」


みんなそれぞれの夢を順番に発表していく。


「じゃあ、次勇人くん」


ついに僕の番だ。

言うことは決まっている。


「僕の夢は、日本一のボーカリストになることです!」


みんなが拍手をしてくれる。


「勇人くんは歌上手いからなれるかもね!」


担任の先生はそう言ってくれた。

自分の夢が認められたみたいで嬉しかった。


■■■


放課後


「じゃあな勇人!」

「うん、じゃあね」


僕は、ランドセルを担ぎ帰宅するため学校を出る。

そして、帰り道を歩いてると愛香さんを発見した。

これはチャンスだと思うすかさず話しかけた。


「愛香さーん」

「あ、勇人くん」


二人並んで、下校する。

僕は緊張して喋りかけられなかったが愛香さんは僕に話しかけてきた。


「勇人くん、日本一のボーカリスになりたいんだってね」

「うん…」


僕は控えめに返事をする。


「勇人くんならなれるよ!歌上手いし!愛香応援するね!」


愛香さんのその言葉ですごくテンションが上がった。

そう好きな人に、応援されてるのだから…。

そして、僕はますますやる気になった。


「愛香さんは、素敵な家庭を作ることが夢だったよね」

「うん!」

「愛香さんも、素敵な家庭作れるよ!優しいし」

「本当、ありがとう!」


そして、僕の帰り道と愛香さんの帰り道別々になるところで約束した。


「絶対、夢叶えようね!」

「うん!」


そして、僕は家へと帰宅する。

家に入ると、カレーの匂いがした。


「ただいま、お母さん!今日はカレー?」

「おかえり、勇人そうカレーよ。もうできるから座ってなさい」

「はーい」


そして、家族みんなで夕食のカレーを食べ始める。

今日は、シーフードカレーだった。


「お母さん、今日のカレー美味しい!」

「そう、よかった。勇人、今日は学校でどんな勉強したの?」

「将来の夢を発表したんだよ!」

「へー勇人はなんて答えたの?」

「僕は、日本一のボーカリストになるって答えた」

「そうなの、勇人歌うの好きだからね。なれるよ」

「ありがとう!」


そして、無言でカレーを食べている父も頷いてくれていた。


みんな、僕の夢を肯定してくれた。


そして、夕食を食べて部屋に戻る。

ここは、僕が一番好きな空間。

壁に好きなバンドの、ポスターが貼ってあり、CDプレイヤーとヘッドホンがある。


僕は早速ヘッドホンをはめて好きなバンドの曲を聴いた。

この時間が一番幸せだった。


音楽を聴いていると、後ろから気配を感じた。

お母さんかな?

後ろを振り返ると、優しそうなおじいちゃんが立っていた。

知らない人が家に入ってきているのに不思議と驚くことなく怖くなかった。


僕は、ヘッドホンを取って話しかける。


「おじいちゃん誰?」

「おじいちゃんはね、人気バンドのプロデューサーだよ」

「プロデューサー!?」

「今から、日本一のボーカリスに会ってみない?」


魅力的な提案だった。


「本当に会えるの?」

「うん」

「じゃあ、会う」

「分かった」


知らないおじいちゃんがそう言うと、僕の部屋が辺りが真っ白で果てしなく広い空間になった。


そして、一つの椅子に金髪で何もかも失ったような顔つきのおじさんが俯いて座っていた。

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