第20話 紺碧の楽園
幾つかの討伐と納品のクエスト受注が完了するとソウジンたちは冒険者ギルドを速やかに後にする。
冒険者たちからの視線が非常に痛かったからである。
「ほんとーに恥ずかしいよ! こんなエロ奴隷の主人と思われることが!」
ピンクゴールドのご主人様はご立腹であった。
据え膳食わぬは男の恥である。理想的な美人を目の前にしてなんのリアクションも起こさないのは失礼にあたるというものだろう。
「まあまあまあ、子供のお嬢にはまだ早かったかぁー?」
などと青年は偉そうなことを考えつつ「クエストを頑張りますので! なにとぞよしなに!」と必死に許しを請う。
紛うことなき恥ずかしい男であった。
エウレカが思い出したように大通りの真ん中で立ち止まる。
「そうだ! 紺碧の楽園には街から歩いて行ける距離だけど、ソウジンは初めてだし、
もちろん答えはイエスである。テレポーテーションを経験できるなんてこんなワクワクすることはない。
黒髪青年たちは元来た道を引き返し再び冒険者ギルドに向かう。
クエストを受注して狩場にすぐに移動できるよう冒険者専用の
「おお! 消えた!」
目の前でパーティーらしき冒険者たちが次々と魔方陣に飲み込まれてゆく。
利用料金はクエストを受注していれば無料らしい。
ただし
「狩場に行くのに自分の
「
「【
さらにピンクゴールドの少女が続ける。
「
どうやら
ただし
「基本的に
「うわ、やってもうた……倒したワイバーンやオークから【
「うん。牙とか皮とかの素材もだね。残念なことをしたね」
知識の重要性は前世でも異世界でも同じらしい。ついでに言えばゲームですらそうだ。もっと学ばなければいけないと青年は反省するのである。
◆◇◆◇◆
――——しばしの暗転。
潮風が鼻孔をくすぐる。眼前に海岸沿いの風景が広がっていた。
「うお! すごい! 冒険者で溢れてる!」
街中の比ではない。そこかしこに冒険者が歩いている。後ろの
まるでロックフェスの賑わいである。
「お嬢! 武器の露店がありますよ!」
武器屋だけではない。道具屋、ポーション屋、素材や
「さすが大人気スポットじゃん。狩場をちゃんと確保できるかなー?」
エウレカは心配そうである。
確かにゲームでも人気の狩場は場所の取り合いになったりする。そして、花見然り花火大会然り。場所取りにはトラブルがつきものである。
「なるほど……だから【
洞窟の入り口に立って青年は大いに納得する。
その見渡す限り青に支配された広大な空洞は、地中海にある『青の洞窟』と呼ばれるロケーションによく似ていた。
「うっわ、入り口付近は人で一杯じゃん……洞窟の奥に行かないとダメかも」
猛暑日の市民プールなみにごった返している。
「マジで半端ないっすね。なんでこんなに人気なんすか? 俺の感覚からすると、これだけ冒険者が多いと魔物の取り合いになって
サービス開始直後のMMORPGをプレイしたことのある者なら知ってるだろう。始まりの街周辺の魔物が狩られすぎて消えるなんてことがままあるのだ。
その結果、魔物のポップ待ち、激しい魔物の奪い合い、ラグや通信障害、荒れる掲示板、ゲームを売るってレベルじゃねーぞ、というコンボが完成する。
「んとねー、いわゆるこの洞窟は【
ピンクゴールドの少女が教えてくれる。
「ほう……だから魔物が枯渇することがないってことですか」
「うん。洞窟で待機してれば濃厚な
「お嬢、詳しいですね」
「へへへ、ありがとう。実はほとんどラヴィアンの受け売りなんだけどさ」
「それでもすごいです! さすが二年間ソロで冒険者をしてただけあります!」
「もう! ソロは余計だよ!」
二人は狩りをするためのキャンプ地を探してさらに洞窟の奥へと進む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます