第3話:魔力側の能力値

ギフト【言語理解】と【不朽不滅】の下方には能力値と見られる項目が並んでいる。

ギフトと能力値の文字は前者の方がフォントサイズが大きい。

能力値は左右縦二列に分けて表示してあった。

まずは左側から能力名とその値を確認する事にした。


筋 力     45

耐久力     95

知 能     96

精神力     99

敏捷性     40

器用さ     90

魅 力     98

生命力   1994

知覚力     88

意志力     99

心身評価  2900


明らかな桁違いが二項目ある。

上から生命力と心身評価だが……これはギフト【不朽不滅】の影響と考えるべきだろうか。

心身評価に関しては、左縦列の能力値の合計の様な感じがする。

この能力値についてルーファスらの考察や解説は後から聞く事にして、次は右縦列の能力を見てみよう。


光属性魔力    20

闇属性魔力    20

火属性魔力    20

水属性魔力    20

土属性魔力    20

風属性魔力    20

時間属性魔力 1580

空間属性魔力 1580

魔力操作     20

魔力耐性   1940

魔力評価   5240


どうやら右縦列は魔力関係の能力値の様だ。

こちらは明らかな桁違いが四項目あった。

右列も左列も【不朽不滅】の影響を受けているみたいだが、そもそもそれぞれの平均値が分からないし、他者の能力値を見た事が無いので比較する事が出来ない。

取りあえず、そろそろ大先生たちの意見を聞いてみるとしよう――。


「――まずは、この能力値を見ての所感を伺いたいです」

そう言いおれは天啓の石板をルーファスから見えやすい様に反転させ、テーブルの中央辺りに押し出した。

サイラスの席からも十分見えるとは思ったが、彼は立ち上がり大先生の後方へと回り込んだ。

ルーファスは右手で白く長い髭をさすり、サイラスは左手で口許を隠している。

双方とも現在考察中と言った面持ちだった。

即答出来ないのは、ギフトと同様に類稀れな能力値なのだろうと察しはつくが……。

「ふむ、そうじゃのう……所感を述べるとすれば、なんとデタラメな能力値か、と言ったところじゃな。何も知らぬ子どもが遊びで設定した能力値の様とも言える」

ルーファスは呆れ顔でそう告げると、茶を一口飲んでいた。

「では、どの辺りが特にデタラメか教えてもらえますか?」

「ふうむ、そうじゃのう……まずは各属性魔力じゃ。時間と空間に関しては言うまでも無いが、それ以外の属性の魔力が総じて均一など、あり得ぬ。生まれ育った環境の影響を受けるゆえに、人それぞれ属性魔力には差が生じるのじゃ。生まれたばかりの赤子でももっと差異があるわい。そして光と闇と四属性の魔力が総じて20とは……成人した大人にしては余りにも低い。これでは精霊魔法の魔法使いにはなれぬと断言出来る程にな」

それを聞くと、確かにデタラメな能力値に見えてくる。

しかしここで匙を投げても仕方ないので、もう少しデタラメ具合を追求する事にした。


「では、この魔力操作と言う能力値に関してですが、これに関しても20という数値は一般的な見地で低いという事になりますか?」

時間と空間の魔力に関してはお互いに憶測でしか話せないと思ったので、まずはルーファスの得意分野から尋ねてみた。

「そうなるのう。魔力操作に関しては魔法の修行を積んだ者とそうで無い者とで大きな開きが生じるが、持って生まれた素質が20の者に魔法を教えようとは誰も思うまい。わしが弟子をとるなら魔力操作は最低でも70は欲しいものよのう。才能に恵まれた者は幼子でもそのぐらいはあるゆえ」

「えーっと、そうなると……時間や空間の魔力が明らかに桁違いですけど、魔力操作が低すぎるので、魔法は使えないってことですか?」

「うむ、まあ、そう言うことじゃ。しかし、例え魔力操作が100あったとしても、すぐに時間や空間の魔法が使える訳では無いぞ?わしらが使うておる精霊魔法は偉大な先人らの研究と研鑽の上に成り立っておるが、時間と空間の魔法に関しては前例が無いからのう。何をやるにしても全てお主が自力で研究開発をせねばならぬ、ということじゃ」

要するに時空間魔法を極めるには途方も無い努力と時間が必要らしいが……幸い時間だけは膨大にあるみたいなので、地道に研究はするべきなのだろうと思った。

全ての文字が読めるなら、古文書を読み漁ったり遺跡を巡っての調査も他の人がやるよりも効率的に進める事が出来るので、絶対に無駄にはならない筈だ。


「――では、魔力操作の20と比べて魔力耐性が1940と桁違いになってますが、これに関しては?」

ここでルーファスは、今まで石板へ向けていた視線をこちらへと向けた。

「これ程の魔力耐性があれば、いかなる魔法も通じぬであろうな。この魔力耐性の数値であれば、わしの滅殺魔法が通じぬのも道理じゃが……しかしのう、これはお主も承知しておると思うが、その後に石板を見た時はこの様な値では無かったのじゃ。正直な話、あの時あの場において天啓の石板の結果を見た際は、ギフト【言語理解】以外は見るべき点は無いと言う印象じゃった。心身も魔力も能力値に関しては平凡そのものじゃったからのう。これは言うなれば、まるっきり人が変わってしまった様な変化じゃ。この只ならぬ変化が全て【不朽不滅】の恩恵と言われれば、それまでの話なのじゃが……そうなると、あの時にわしの滅殺魔法を無効化したのは【不朽不滅】の効果では無い、という事になるのかのう?」

確かに、ルーファスの言う通り時系列で見ると滅殺魔法を受けた後に【不朽不滅】を会得となる。

何か天啓の石板から得られる情報以外の隠し要素がある様な匂いがぷんぷんとするが、今のところは棚上げしとくべきか。

それよりも先に左列の事を聞こうと思ったが、そのタイミングでルーファスは「少し、リョウスケの結果と向き合い考えを深めたいゆえ、心身側の説明はサイラスに委ねる」と言い、石板を手元へ引き寄せた。


突然訪れたバトンタッチにサイラスは「へ?私がですか!?」と声を裏返らせていたが、それに対しルーファスは「心身側の能力値に関しては、わしもお主も似た様な解釈であろうからな、任せた」と口早にそう告げるとその後は押し黙ってしまった。

尊敬する大先生からそう言われてしまったら彼も引くに引けないだろう。

「分かりました。では、リョウスケ……引き続き心身側の能力値の考察を始めましょう」

サイラスはそう言うと、大先生の後ろ側から元居た席へと戻り茶で喉を潤していた。

おれとしてはざっくばらんに会話を楽しみたいところだが、大先生を目の前に意気込んでしまう彼の気持ちは良く分かるので、その意は酌むべきだと思っていた。

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