第18話 おっさんは時間がない
客間で席を共にする虎獣人、エリシア、俺。
そして隣に立つルシア
虎獣人一人を向かいに座らせ、いつでもエリシアを守れるように気を張る。
争う意思は無さそうに見えるがどうなるか分からない。
もしもの時に備えルシアにも控えてもらっている。
「我は革命の牙、幹部のラッシュ・ルーダーだ。此度は女王に頼みがあって参った。だがその前にーー」
細身だが筋肉質な虎獣人ーーラッシュは突然立ち上がった。
俺は転移魔法でエリシアを逃がす準備をする。
ルシアも身構える。
そして、ラッシュはーー
「すまなかった」
そう言ってエリシアに頭を下げた。
「我は貴方を見誤った。そのことを謝罪したい」
さっきまで敵意剝き出しだった男が頭を下げている。
それは俺やルシアがいくら強かろうと決してできないことだ。
それはエリシアにしかない力なのだろう。
「そして先刻までの無礼は承知の上でゲルファの街で処刑予定の革命の牙、リーダー『ジョット・ライヴァ』の解放を頼みたい」
「ジョット・ライヴァ!?」
俺は驚きのあまり立ち上がる。
「ご主人様、どうされたのですか?」
ジョット・ライヴァ。
それは革命の牙のリーダー、そしてーー
本来の流れではラッシュと共にゲルファの街に向かっている途中のアルスと出会っている頃だ。
そしてアルスとゲルファの街に到着した所で他の革命の牙メンバーは領主に捕まったと判明。
そこでアルスと革命の牙のメンバーを解放する、というのがゲームのストーリーだ。
それが何故?
「ラッシュ。アルス、という名前に聞き覚えはあるか?」
「アルス? いや、初めて聞く名だ」
何で知らないんだ?
ゲームだとアルスのシュライアでの活躍を聞きつけゲルファからジョットが来る、という流れの筈…。
ん?
シュライアでの活躍?
「あっ!!」
「アラベルさん!?」
そうだ…。
シュライアの問題は俺が解決しちまったんだ。
本来ならアルスに会うためにゲルファを出ていたことで捕まらなかったジョット。
しかしアルスの活躍がなくなったことでジョットは街を出ることなく捕まってしまった。
まずい。
これで仮に主要キャラであるジョットが処刑されればどんな影響が出るかわかったものではない。
「エリシア、この件だが俺からも頼みたい」
「ええっ!? いきなりどうしたんです!? ま、まあもとより受けるつもりだったので構いませんが…」
「我の頼み、受けてくれるのか!?」
今度はラッシュが驚きの声を上げる。
「貴方達は不甲斐なかったわたしに変わって民を守ってくれていたのでしょう? それなら断る理由はありません」
堂々と答えるエリシア。
どうやら今は女王スイッチが入っているようだ。
「っ!? 心遣い、感謝する」
そう言うとラッシュは膝をついて感謝を述べた。
「感謝を述べるのはこちらの方です」
エリシアも感謝の言葉を述べた。
しかしその後、気まずそうな顔で俺の方を向くエリシア。
「それで…アラベルさん」
「どうした?」
「わたしは帝都から動けないのでゲルファに向かってもらいたいのですが…」
「何だそんなことか。元から俺も行くつもりだ。構わないぞ」
なにせ破滅がかかってるからな…。
「ありがとうございます!」
ぱあっと笑顔を浮かべるエリシア。
「それでラッシュ。ジョットの処刑はいつなんだ?」
聞くとラッシュは澄ました顔でとんでもないことを言った。
「明日の正午だ」
「は?」
「明日の正午だ」
「いや聞こえてるから!」
明日の正午ってもう24時間切ってるじゃねえか!!
「ちくしょおおおお!!!!! またギリギリかよおおおお!!!!」
俺の悲痛な叫びが屋敷に響き渡った。
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《あとがき》
いつも読んで頂き本当にありがとうございます。
第2章はここで終わりとなります。
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