第7話

 

「やれやれ……スラム街でも世間知らずだな。こりゃ……」


 俺は素に戻ると、ジンの可愛い顔を冷たい目で睨んだ。

 ジンはこちらに向かって、ニッコリ微笑んだ。


 床で倒れているマスターを介抱してやるために、二階へ負ぶって行くとジンがのこのことついて来た。


 もう母と自分の命は安全だと思っているようだ。

 信用第一だからジンには言わないが……正直途方もなく厄介だった。投げ出したいくらいだ。


 アンダーワールドに行くには、軍と同じ兵器会社の武器を装備している必要があるし、例え俺の身体が1000体あったとしても、短期間で入り口を調べるのは可能性ゼロだ。そこは、サイバー・ジャンクシティのどこかにあるといわれているあやかしたちの超巨大都市だった。あやかしには、人権はなく。代わりに簡易保護制度があるくらいだ。それだけ、いつ現れては消えてしまうほどの不可思議な存在だし、あやかしを捕えるほどの酔狂な奴らの組織はそこにしかないと俺は考えた。


 俺の情報網では「シンフォニック・エラー」が一番最初に発生した都市がそこだとも言われている。


「ふぅー、ジン。これだけは言っておく。階段のそこには手を振れるな……」 

「へ? ここ?」


 俺はその階段の踊り場にある鏡の横を指差した。

 ジンは踊り場で、ニコニコとしながら指摘したところを今も右手で触れている。


「ああ。そこには、ある武器が隠してあるんだ。金の無い時に中古で買った銃だから、引き金が軽いんだ。かなり危険だぞ」

「うん……わかったわ」


 ジンの顔色がほんの少し変わった。狐耳をひょっこりとだして、俺に真面目な目を向ける。その瞳はなんだか怯えた目だった。

 その時、カランカランとドアが開く音がした。

 階下から数人の訓練された足音がする。

 

「さっき言った言葉を撤回する。そこから武器を取れ」

「え? いいの?」

「ああ、弾は装填されている。引き金が軽いから気を付けろ」


 俺はマスターを床に置き、階下へ走る。

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