第6話


「ありがと」


 俺はカプチーノを、もう一杯作ってからカウンター席のマスターへ渡した。うん? マスターが密かにジンをじろじろと脇目で見ているようだ。


 ジンは今のところ気が付いていないようだった。


「ああ。マスター。そいつは、スラム街から来たジンっていう名の俺の新しい依頼人だ。報酬はがっぽり。敵は壮大。寝食昼寝付きのプラチナ級の依頼だがね」

「ほほう。うーん……その……報酬はがっぽり? で、間違いないんだな?」

「ああ……」

「そうか。そうか……。うんうん。良かった良かった」

「ふふん。だが、敵は、あのアンダーワールドの組織だと思うんだ」

「……それ、本当?」

「ああ」

「別の依頼は?」

「ない」

「……」


 ジンは首を傾げる。

 世間知らずもいいところだ。

 いや、裏の世界を知らな過ぎだ。


…………

「お! 凄いなあ! この金……?!」


 しばらく雨の音に耳を傾けて、これからの計画を練っていたが、マスターの声に気が付いた。カプチーノの入っていたカップを洗っていた手を止め。キッチンから振り向くと、マスターがジンからスマホ同士をコードに繋げて、金を貰っていた。


「ああー!! マスターー?!」


 俺は生まれて初めて、間の抜けた声を発した。

 途端に、マスターがカウンター席から失神して転げ落ちた。その顔面蒼白の顔に白目を開けて……。

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