第3話

 ここサイバー・ジャンクシティにも、大昔の日本から伝来するあやかしがいる。元々、ここは日本という国だったようだ。


「あの……あなたに依頼に来たの……」

「それで……?」

「それで……お願いしてもいい? 母がとある組織に捕われてしまっていて……グスン……」

「それで……?」

「助けてほしいのよ……」

「それで……?」

「……依頼料はGNPの50倍よ」

「?! な?! 冗談だろ!!」

「無理?」


 少女は小判のストラップが付いたスマホを差し出した。

 俺もスマホを取出し、スマホ同士でコードを繋いだ。

 途端に、俺のスマホが悲鳴を上げるかのようなカウント音を発した。

 液晶に映し出された金額は、確かにGNPの50倍は軽くいっていた。


「……ちょっと、待て! 待ってくれ! 頭が整理できない! あ……飯食うか?」

「え? え? ……今、お腹空いてるけど?」


 俺はここの料理屋「キアニーナ・ビステッカ」のキッチンへ向かった。


「ああ、マスターは今はいないんだ。買い出しに行った」

 

 俺はそう少女へ告げると、早速。料理を作る。ピザをオーブンで焼き。そして、もう一つ。人参、ニンニクなどの野菜にオリーブをかけて、バーニャカウダの出来上がりだ。


 それらを、少女が座ったカウンター席へ皿を置くと、俺は依頼料のことは一時忘れ去る。

 

「う……美味しそう! けど、私の依頼は?」

「うん……今受けている依頼の後だな。引き受けたよ」

 

 少女は、カウンター席へと駆けてきて、やっと微笑んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る