おじさんとおばさん

「あら……?」


 朝方にまどろみの中を行ったり来たりする人もいるそうだが、僕は違う。


「レンベルを呼んでこなくちゃね」


 起きてすぐの体でも戦えるぐらいにはよく動く。そして、自分がどうなったのかもすぐに思い出す。

 倒れた後どのぐらい時間が経ったのかは分からないが、知らないおじさんが僕を担いでくれたのを覚えている。しかし、さっきまで僕の隣にいたおばさんの事は知らない。

 小さめのベッドは、部屋の四分の一を占めている。低い天井に岩肌の壁、扉の方からうっすらと光が入ってくるだけなので、少し暗い。

 トトトンと足音が近づいてくる。二つの影が部屋に入って来た。


「やぁおはよう。気分はどうだい」


「あ、えっ、元気です」


「あらあなた、奇麗な緑の目をしてるのね」


二人の肌の色は小麦色で、おばさんはくせ毛だ。


「それで、どうして村外れで倒れてたんだい」


「ええと、テントが蟲に襲われて家族と逸れたので、族長に町で一年待つように言われたんです。それで、気が付いたらここに」


「それじゃあ君は国境からここまで一人できたのかい。そりゃすごい」


「あのね。言いにくいんだけど、ここはその国境沿いの町じゃないの。一つとなりの小さな村なのよ」


 僕は驚き、そして悲しくなった。やっとの思いでたどり着いた場所が違う場所だったなんて。


「そ、そうだ!おじさんの名前はレンベルって言うんだ。な?」


「そう!おばさんはメヨナって言うのよ。それで、あなたは?」


 きっと僕は悲しい顔をしていたのだろう。二人は焦って話題をかえてくれた。


「僕の名前はリカルドです。この度は助けてくれてありがとうございます」


「や、や、いいんだよ。家の裏手で野垂れ死なれちゃ困ると思っただけなんだ」


「それよりあなた、これからどうするの?」


この村で過ごそうか、町へ行こうか、どうしようか。


「ちょっとまってくれ。俺はたしかに親切で助けたが、ありがとうございますといって町へ行かれたんじゃ助け損だろ。少しでいいんだ。ここで働いていってくれないか」


「ちょっと!」


「お前の畑がもうすぐ刈り入れ時だろ? 手伝ってもらえばいいじゃないか」


なにか恩返しができるなら、それに越したことはないだろう。


「お前の家は寝具が一つ余ってたろ? 住まわせてやればいい」


ん?


「お二人はこの家に一緒に住んでいるんじゃないのですか?」


しばらくの間、二人は少し顔を赤くして、黙り込んでしまった。

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