第二話 迷子の女の子に約束をします

 俺たちを怯えた目で様子の白い女の子。


 何でこんなところに女の子が?しかも物凄く肌が白い。

 俺は女の子に手を差し出した。


「大丈夫?寒くないかい?」

 恐らく不審者に思ったのかさらに震え出し雪に顔を突っ込み出した。


 絶対に冷たいに決まっている。この女の子相当に俺の顔が怖かったのか?それともキモいとか思ったのか?


 とりあえず安心してもらわないといけないよな。


「ルーヴ、少し手伝ってくれないか?」

 俺はルーヴを呼び出してある頼み事をした。


 不思議そうにするグレスとソフィア、そして女の子は何かを作業をしている俺とルーヴをじっと見つめている。


「よし、完成した」

 俺とルーヴは最後に木の枝を刺して雪で作ったそれを女の子に見せた。


「これは何ですか?」

 ルーヴは自分で作ったものの周りを歩きながら時々首を傾げて俺に聞いてきた。


 やっぱり、雪が積もらないなら雪だるまも知らないはずだな。

 

「これは雪だるま、こうすると可愛いだろ?」

 俺は雪だるまに目と口、そして最後に少し太い木の棒を刺しながら少し胸を張って自慢げにしたけど女の子の反応は予想していないものだった。


「おうちへ帰りたい……」

 雪だるまを見ながら寂しそうに肩を落とす女の子。


 グレスは冷めた目で俺をみながら「逆効果だったようですね……」と言って来たけど俺もこうなるとは思わなかったよ。


 どうしようか……どうすれば心を開いてくれるのか考えに考えているとソフィアが俺に丸めた雪を投げて笑った。


「そんなに怖い顔していたら余計に怯えちゃいますよ」


 そうか、雪合戦だ。

 子供なら誰もが一度は経験するであろう雪合戦をすればきっと女の子も心を開いてくれる。


 俺はそう思ってソフィアに投げ返した。


「冷たい!」ソフィアはそう叫びながら今度はグレスに雪を投げると見事にグレスの顔に当たった。


「よくもやったわね!」

 グレスは少し楽しそうにソフィアに投げ返す。

 するとルーヴも雪を投げだしみんなで雪合戦が行われた。


 雪を投げ合い冷たそうにする三人。

 それでも雪かきの時とは違い楽しそうな笑顔で必死になって遊ぶ姿はとても可愛らしくそして何故か魅了された。

 

 なんかいいなこういう風景。

 俺に仕えてくれている三人、みんなそれぞれ慕ってくれたり生意気だったり懐いてくれたりと個性ある三人だけどみんな違ってみんな良い。


 そんなことを考えてぼーっとしていると三つの雪が俺の顔面に直撃した。


「何してるんですか?一人だけそうやってぼーっとしていたらつまらないですよ?」

 グレスは優しい笑顔を俺に向けてくる。


 時々見せる彼女のこの笑顔で俺の心臓がギュッと締め付けられる。


「そうだな……」

 俺は三人に雪を投げ返した。


 しばらく雪合戦をしていると女の子は楽しそうな俺たち四人を見て少しずつ近づいて来た。


 人見知りなソフィアは話せるわけもなくルーヴが女の子に目線を合わせて話かけてくれた。


「一緒に遊ぶ?」


「うん……」

 少し恥ずかしそうに頷くけれどさっきと違って笑みを浮かべている。


 そうして女の子が混ざり五人で雪を投げ合うようになったけど少し恥ずかしそうに雪を投げる女の子。


 そんな女の子と裏腹に容赦なく綺麗な直線を描き俺へと雪を投げ込む他三人の女子たち。


「痛い!痛い!タンマ!手加減してくれ!」

 あまりの痛さと冷たさにさすがの俺も心が挫けそうになった。


「フフフ」

 痛がる俺を見て口を手で押さえながら小さく笑った女の子はようやく心を開いてくれたようだ。


 女の子につられて笑い出すグレスたち。


 笑われた俺は少し恥ずかしくなり少し不満げな顔をして四人に小さく文句を言った。

「そ、そんなに笑わなくてもいいじゃん……」


 雪の冷たさと当てられたことにより顔がとても冷たくて痛かったけれど……まぁ、女の子が笑ってくれたからよしとするか!


「まだまだ終わらないぞ!」

 俺は再び立ち上がって三人に雪を投げ返し、女の子にも優しく雪を当てた。


 辺り一面綺麗で眩しい銀白で覆われている。

 そして雪が飛び交う城の出入り口には楽しそうな笑い声が響いていた。

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎ昼ごはんを食べるのを忘れ気づいたら昼過ぎの時間くらいになっていた。


 一斉にお腹が鳴り出す。

「少し遅いけれどお昼にしますか……」

 ルーヴは俺にそう言ったけどみんな忘れている。


 それは王様を放って昼食を取らなかったこと……。

 城にいる時は全員でご飯を食べようって約束したのに王様怒っているだろうな。


 全員で恐る恐るダイニングルームへ向かったがドアの手前で恐ろしいオーラが俺たちを襲った。

「こそこそと何しているんだ?スカイ」


 まぁ、バレるよな……。

 相変わらず9歳とは思えないほど恐ろしいオーラを放つプレザント王国の王様は俺の袖を掴み引っ張った。


 結局、俺たち全員、横一列で立たされて説教を受ける。


「遅い!待てなくて先に食べようと思っていた!ていうか遊んでいるなら我も呼ばんか!」


 怒っているような拗ねているようなそんな声で腰に手を当てご立腹の様子。


「すみません、ついはしゃぎすぎました」

 俺はみんなを代表して頭を下げて謝ったがまぁしばらくは許してくれないだろう。


「ところでそこの幼女は誰だ?」

 小さく白い女の子を見て少しだけ目を輝かせている王様。


 幼くもまんまるおめめに綺麗な白い肌、王様も幼いが母性本能だろうかまるで子犬を見るようにうっとりとしていた。


「朝、雪かきをしていたところ雪の中にいました」

 俺が簡潔に説明すると王様は女の子の頭を撫でながら話した。


「そうか、雪の中からそれは寒かっただろう。中へ入ろうな」


 あれ、王様は雪を知っているのか?ルーヴたちは知らなかったのに。


「王様、雪をご存知なのですか?」


「あぁ、知っておるぞ。この王国から北の方向にあるスノーアイランドという国に父上と母上に連れて行ってもらったことがある。そこで雪遊びをたくさんした記憶が少しだけあるんだ」


 へぇー、そんな国があるんだ……。

 スノーというからには寒い地域のような気がする。


「スノーアイランド……私のおうちがあるお国……」

 小さい女の子は寂しそうなボソッと呟いた。


「そうか、スノーアイランドにおうちがあるのか」

 王様は女の子の手を握りながら女の子に同情したのか寂しそうな表情をした。


「とりあえず昼ごはんを食べながら話を聞こう」

 王様の提案で昼は六人で食べることになった。


「まずは名前からだな、名前は何というんだ?」

 珍しく王様がお気に入りの俺以外に興味を示している。


「名前は……エナ」

 恥ずかしそうにそういう女の子は顔を赤くしてモジモジとしている。


「エナ、まず何故ここにいるのかそして何故親とはぐれたのか教えてほしい」

 王様は優しく聞いた。


 エナは小さい声で一生懸命に説明してくれた。


 両親と長旅をしている途中、何者かに襲われはぐれてしまった。


 何とか大雪が降ったおかげで逃げ切れたけどここがどこだか分からずにそのまま気を失ってしまい起きたらソフィアがいたという。


 こんなか弱い女の子を襲うなんて……。

「その襲ったやつの顔とかは覚えていないの?心当たりとかは?」


 エナは首を横に振った。


「そうか……」

 だったらやることは一つしかないこの子を無事に家まで返してあげること。


「エナ、俺たちが無事に家まで送り返してあげるよ」

 俺はいつにも増して真剣な目でエナを見つめた。


 全員、思っていることは一緒だったみたい。

 ニコッと優しい笑顔をエナに向けて約束をする。


「残念だが我は行けない。代わりにスノーアイランド王へ紹介状を書こう、ついでに途中に入国しなければいけないノースオーシャン王国の招待所も書いてやる。あそこはいろんなものが売ってあるから楽しんでくると良い」


 王様は用事があるのか残念そうな笑顔をしているが彼女の粋な計らいで俺たちは少しばかりの休養になり外国旅行の気分になった。


「ありがとうございます!」

 見事に四人の返事が重なっり早くもテンションが高くなっているのが分かったが、王様はエナの頭を撫でながら俺たちに強く注意をする。


「いいか?これはエナを安全に家へ帰すのが使命だ。観光は二の次、絶対に失敗は許さないぞ!」

 浮かれた俺たちを睨むように見る王様。


 そんな彼女を見ていると幼いお姉ちゃんが可愛い妹を庇っているようにしか見えなくて和んでしまった。

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