欲求不満な僕らの詩

通 傑

男は喉が渇いていた

満たされることのない枯渇を、

胃の中のどよめきを、

砂利で紛らわしていた

穴の空いた胃の中に砂利を流し込む

男は砂利がどこへ消えていくのか知らない

砂利では潤いを得ることができない苦痛に

耐えかねる

男は苦悩する

彷徨う

自分を見失うほどに

漂った先に泥水を見る

男は歓喜する

これこそ潤いなのだと

これで自身は報われるのだと

男は知らない

それがドブだということを

はまったら戻ることのできない

ジレンマに

沈んでしまうことを知らずに

男は潤いを求める

男は全身を泥水に浸す

穴から泥が身体を満たす

沈んでいく沈んでいく

どことも知らない奥底へ

男は幸せだった

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欲求不満な僕らの詩 通 傑 @marginalman0909

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