第6話 新型核融合炉!

 これまで、核融合は40年先にできるといわれては、いつまでも40年先のままだった。現状の地場閉じ込め型とよばれるタイプは、国際協力でフランスに新しい炉を建設し、日本にコントロールセンターが設けられたが今回もそうそううまくはいくまい。


 地場閉じ込め型の弱点は、「プラズマ」をおこし、必要な「温度」に到達させ、かつ「とじこめて維持」するのにきわめて強い地場が必要なことだ。到底、実現できそうにないシロモノだが、これまでの学会や関係者たちも多く、彼らが食っていくためにやってるようなものだ。半導体製造装置でもプラズマをおこしてはいるが、そんなのはるかに比較にならないほどの高濃度プラズマなのだ、無理だと思う。


 実は最近、レーザー爆縮型とよばれる核融合装置でブレークイーブン(投入したエネルギーを発生したエネルギーが上回る状態)が実現された。これを受け、日米ではベンチャーが立ち上がり、十年後には実証炉を作る計画である。


 どうみたって、レーザー爆縮型の方が理論的にすねおで、力ずくでやろうとする地場閉じ込め型は勝てそうにない。磁石は強力な磁場を発生するため、超電導状態であり、超電導状態が維持できなくなるたびに、巨大な衝撃が発生する。正直、まともじゃあないと思うし研究のための研究をやってるみたいに感じる。


 レーザー爆縮型は小さな球に押し固めた水素(重水素、三重水素)をカプセルにいれて、ぽとぽとと落とす。そこに大出力のレーザーを四方八方から当てるというもので、そのレーザーの出力はそんじょそこらのものではない。瞬間的には都市の消費電力に相当するほどのパワーを持っている。そうすると、カプセルの表面が瞬時に爆発的な膨張を起こし、反力で内部の重水素、三重水素が急激に圧縮・加熱される。極度の圧縮状態実現によってついには点火し、カプセルは反応を起こすのである。


 日本ではかねてより大阪大学の激光シリーズレーザーやローレンス・リバモアなどで研究されていたが、昨年、ついにローレンス・リバモアがブレークイーブン(入力エネルギーを放出エネルギーが上回ること)を達成し、民営化しようという動きが起きた。日本でも同様である。


 こちらの方が、地場閉じ込め型より分が良いとプラズマには近寄らない周囲の研究者たちは思ってはいたが、なにしろプラズマ長屋の重鎮たちが居座る磁場閉じ込め型の連中は国のカネをどっぷりとつかって、もう数十年以上進歩もないまま居座っている。そうはいくか!


 核融合を使うメリットとしては、超ウラン元素のようなやっかいな処理物ができないことだ。もちろん、放射性廃棄物は生成する。三重水素は天然にほぼ存在しないので、リチウムに中性子を当てる必要があるため、反応容器のごく近くにブランケットと呼ばれる入れ物のなかに、リチウムをいれておく。そして、中性子を浴びてもらって三重水素に変換するのである。当然、ブラケットの材質は中性子を浴びるから、元素転換がおきるものがあり、放射性も帯びる。だが、超ウラン元素に比べれば百倍マシだ。


 ついでに、なんでまた三重水素なんて面倒なものをつかうかというと、太陽では普通の水素原子核同士が核融合してヘリウムができるわけだが、これはH-H反応とよばれ、必要なエネルギーが高い。少し必要なエネルギーが低い反応で重水素どうしの反応を使うのがD-D反応だが、まだこれでも高いので、しょうがなく三重水素と重水素(天然に多量に存在)をつかってD-T反応を起こす。水爆では三重水素の代わりに、リチウムがいれてあり、三重水素に転換されて核融合をおこす。


 というわけで、もしかしたらだが、核融合炉ができる未来の端緒にわれわれはいるのかもしれない。核融合は連鎖反応を起こさず、生成物もヘリウムであり無害である。いつでも止めようと思えば止められるし、超ウラン元素ができて炉心溶融なんてこともない。燃料再処理も必要ない。ただし、リチウム三重水素転換装置の容器が放射化されるので、これは別途埋めとくしかない。


 あと、リチウムだが大量に必要になるので、これはもう海水から取り出す技術を開発するしかない。リチウム鉱山は一部の国に局在し、使い続けられるほどの量地上にはない。電気自動車用のリチウムでさえ、すぐに足りなくなるといわれているのに、陸上の鉱山を掘り起こして燃料にするわけにもいくまい。しかし、海水には多量のリチウムが希薄だが存在し、工夫をすればなんとか採算とれるめどはついている。


 まあ、あとは妙な核融合反応があるのだが、意外としられてないので、次に紹介する。非常に奇妙な素粒子のふるまいを利用したもので、これまではエネルギー回収は不可能だと考えられてきた。

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