第5話 原子炉攻撃がこわいから、やっぱやめとく?

 ウクライナへのロシア侵攻で、本気で怖かったのは原発への直接攻撃である。


 こんなことされたら、たまったものではない。原子炉格納容器は破壊され、内部にため込まれた高レベル放射性廃棄物が飛散する。ロシアはほとんど脅しに近いところまでミサイルを撃ち込んでるわけである。ザポリージャ原発がもし破壊されたら、ウクライナは人が住める土地ではなくなる。これはもう、どうしようもない。


 海中原発なら大丈夫かって?いや、海中といったって、本物の潜水艦ではないんだからせいぜい水深100メートルが限度だろう。それだって10気圧もかかっている。耐圧船殻があまりに厚いのは経済的に成り立たないだろうし、高電圧ケーブルだって、常にかかる電圧の影響と、水圧と塩分で寿命が短くなってしまうだろう。


 だいたい、現在の海中ケーブルの寿命は20年くらいとされてるが(設計寿命は40年というデータもあるが、設計寿命だ。理想的には、っていう話)、メンテもやらなければ怖いし、発電所からの出力電源なら二系統くらいないと安心できないのではなかろうか。


 しかし。


 100メートルの水中なんぞ、簡単に対潜ミサイルで破壊されるだろうし、海上に吹きあがった放射性物質は深刻だ。陸地から遠くに作ればいいといったって、ケーブルの問題はまだ残る。通信ケーブルではなくて、高電圧ケーブルなのだ、そこは間違ってはいけない。腐食やメンテの問題があるから、そんなに陸から遠くに作ることはできないのである。


 たかが電気自動車のために、国が亡びるってのもどうだろう。やっぱり、やめとくか。みんな火力にしちまうか。どっかの国みたいに石炭燃やして、電気自動車大国です、とかいうのもどうかと思うが。


 とはいったって、日本みたいに資源のない国は、電源は多数あったほうがよく、リスクマネジメントの上で火力だけというのもヤバい。なぜなら、欧州を見よ。今、かれらの国はフランス、北欧以外ほぼ火力に頼って発電している。おかげで、電力大高騰である。日本のように中東外交を活発にしてきたわけでないから、アラブ諸国から優先的に原油を輸入できるわけでもない。なにが、日本に化石賞だよ、てめえらの国はもっとひどいことしてるのに。


 また、LNGを日本は各国に分散して輸入する戦略をとっているから、ロシアの影響をあまり受けてない、というだけであり、資源貧国であることは間違いない。


 マスゴミの影響を受けないまともな人間なら、エネルギー資源はできるだけ多く持った方がよいに決まっている、とわかるだろう。原子力はその一角であるのだが、攻撃されたらどうするというちょっと怖い一面も持っているわけだ。おまけに、日本の周辺国ときたら、やりかねない国ばかりじゃないか。


 なぜ、今の原発が破壊されるとそんなに怖いかというと、やっぱり核分裂型の原子炉であるからして、超ウラン元素やら各種放射性元素が山ほど蓄積されているからである。しかも、再処理工場がまともに稼働してないから、再処理されることもなく原発の内部に閉じ込められたままになっている。


 その量たるやすさまじく、すでにプルトニウムだけでも日本には50トン近くもあるのだ。10ミリグラムで死んでしまうプルトニウムが全人類をぶち殺すほどの量、たまってるわけである。


 高レベル廃棄物の一部だけは、フランスに処理を頼んでいるが、その量は全体に比べたら微々たるものだ。取り出したプルトニウムは再度、燃料棒にウランと混ぜて詰め込まれ、一部の原発で利用されている。だから、ちょっとづつ減ってはいくのだろうが、なにせ50トンである。量が量であるし、国内に再処理技術を持たない日本にとってはどうしようもないほどの量である。


 じゃあ、原発やめるか?いやいや、それじゃあ電気自動車が、という「環境派」の方にご朗報がある。わたくしはキチガイなので、「ご朗報」とかいったって、トンデモないご朗報かもしれないから、信じないように。じゃあ、次いこう。

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