第4話 しょうもないから、原発でも作るかってハナシ

 まあ、ここまで述べてきたように、再生可能エネルギーの実態たるや惨憺たる状況である。水を分解して水素つくります、だったら最初から電気使えばいいのにみたいな「タコが足を食ってる」ような状況ばかりである。


 風力だって太陽光だってお天気まかせである。メンテだって大変だよ、特に洋上風力なんてどうやってコスト回収するんだろう——だって、浮船にのった大量の風車をひとつづつ整備するんだぞ――とか思ったりもする。太陽光だっておなじだ。中国は世界最大の太陽電池製造国だが、国内の砂漠に太陽電池畑を作ったりはしない。コストがかかるし、砂でもかぶれば掃除しなければ発電効率が落ちてしまう。


 アブラヤシ油だから自然由来です、とかとんでもないわけである。現地の写真をみてごらんなさい、ジャングルをばっさり切って見事に立ち並ぶアブラヤシの列、それはまるで整然と並ぶビル群のようであり、実際人が採取しやすいようにそうしてるわけである。


 元々ジャングルに住んでいた動物でもでてこようものなら、即座に退治である。おまけに、アブラヤシ油なんてそのまんまつかえるわけがないから、化学処理である。大した自然由来もあったもんだ。マーガリンのことをプラスチックだと批判する人がいるが、あれは自然油に水素を吹き込んで固化させてるからだが、それどころじゃあない複雑な反応で処理するわけである(まあ、こんにゃくだって、石灰入れたりするわけだし、プラスチックとかいうのはどうかとおもう)。


 だから、もし火力がいやだというのなら、原子力しかないわけである。しかも、現在の原子力発電は核分裂炉であるからして、ウランという非常に重い金属を分裂させてエネルギーを得る。ウランが分裂してくれるだけなら、結構なことだがウランより重い元素ができちゃったりするわけである。


 こいつらはホントしょうもない性質を持っていて、半減期も様々、中には何万年とかいうやつから十年単位のものまである。おとなしくしてくれればいいが、そうではなく、放射線を放ち、熱も出す。だから、主要な超ウラン元素は他と分離したうえで、半永久的に埋めとくしかないわけである。


 核分裂を使う以上、そういうのは出るわけで、それを処理しようとしたのが「ふげん」タイプの再処理炉である。超ウラン元素に中性子を当てて、小さい元素に分裂させて無害化処理しようとしたが、まあほぼ失敗している。


 もう、この際、超ウラン元素を半永久的に埋めちゃうのはしょうがないとあきらめて、現在では新たな核分裂炉が開発されている。様々なタイプがあるが、発想は①小さくつくって、現地では組み立てるだけのプレハブ方式、②原子炉格納容器は地下に埋める、③ポンプをつかわない自然対流冷却、というのが共通要素である。SMRと呼ばれている。


 ①のメリットは工期短縮と工場で主要部品を厳密に管理して作るから不良がでないことである。②のメリットは福島の大惨事が生かされて、高いはしご車で水を高くまで上げなくても、上にプールをつくっておいて、熱暴走したら即座にプールの水を流し込むことができる。③のメリットは燃料棒を短くして、水が勝手に自然対流して冷却されるようにすることで、全電源喪失に対応する。


 というわけで、小さい発電量の炉(SMR)になるわけである。いまの沸騰水型原子炉は一基で120万キロワット以上の出力があるが、SMRでは30万キロワットくらい。だから、たくさんつくってクラスター化してしまう。周囲には水素発生装置なんぞも並べればなお環境によさそうに見えるわけだ。


 いや、いいんだけどね。いいんだけどさ、いくら冷却できたって原子炉溶融にいたった発電所のプールには永遠に水を入れ続けるわけにもいくまい。


 そんなこったら、と私は思うのである。


 すでに米ロは水中に原発を持っているわけだ。しかも大量の海水の中に。人はそれを原子力潜水艦と呼ぶ。沈んだところでしらんぷり、深海だから回収できません、永遠に冷却されるので大丈夫です、核ミサイルにプルトニウムはいってますけど希釈されます、でいいわけだ。


 素晴らしい、じゃあこれ発電に使ったらいいのに。と、キチガイであるわたしは思う。


 なにも、深海に置いとく必要もあるまい。日本海溝の上部あたりに作っておけば、いざとなったら沈めて一万メートルの海溝である。おまけに、海溝ではプレート運動がおきていて、地殻がマントルに沈み込んでいくわけだから、いずれは地球内部に沈んでいく。すばらしい、なんとすばらしいのだろう。





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