13 追加入ります
さあ! 体制が整っていない内に、まずは先手を取るべし。
ストライク!
エフェクト的にそこまで削れてないな。先手で重傷を負わせたかった。軽感触だし相手は5人だ。一旦引いて、様子見をした方がいいかな。
「《ドライブ》《ギアチェンジ》」
「《アクセル》」
「《フルスロットル》」
「《ビルドアップ》」
おうおう、バフ盛り盛りですねえ。
「セツ〜いつもので」
オーケー相棒!
「臨戦体制!」
リーダー格らしき男がそう言うと、全員が剣を構え、私達に対抗しようとしてきている。
今更なんだけどさ、なんで全員が剣持ってるの? 形や大きさは違うものの、それぞれが剣を装備している。パーティーバランスおかしいよ。まあ魔法を気にする必要がなさそうだから安心だけど。
そんなことは置いといて、カナにいつものって言われたし、それを実行しますかね。
私が気にするのは位置取り。
カナと敵の間にわざと入るようにし、一瞬だけ、カナの方を向く。
『カナタが【火球】を発動!』
アイコンタクト! 私とカナなら少しの目線で魔法のタイミングと、避けのタイミングを合わせれる。カナなら合わせてくれる!
敵からしたら、私がカナを体で隠すことによってカナの魔法は見えていない。私が横にそれたと思ったら、魔法がすぐ目の前まできている状態。
初見なら、まともに当たる。
こっからは対応される方が多く、当たらなくなるかも。
状況把握も忘れずに。私に最初に攻撃してきた人を相手にしている間に、もう2人の増援が来てる!
そして後の2人はカナの方に回り込みながら接近中。
向かわせないけどね。
前衛は後衛を守るように動くのがセオリー。
横に回り込んできている2人の間を抜けて、カナの元へと向かう。ついでにホウキで叩いておくのもも忘れないこと。
む!
防がれた! さすがに対応が早いな。
基本的にホウキの扱いは打撃系と刺突系の合体。こういうゲーム系だとよくありがりな武器だろうし、さっきの攻撃から順応してきてる。
前を向いてカナの敵を視認。カナは魔法でなんとか応戦してるけど、さすがに詰められてるとやりづらそうだ。
カナは殺らせん! 今、さっきの奴らが追いついてくる前にカバーする!
覚悟! カナに向かっている男は、まだカナに夢中で私には気づいていない。今ならいける。
ストライク!
私が1人に向かってただの突き技を発動させようとした時、誰かが私と男の間に入ってきた。けど、このゲームは
そうすることでスキル無しの剣技戦に持っていく! ここじゃFF気にして味方巻き込むスキルは使いにくいでしょ。
スキルの範囲攻撃が使われないなら、私の避けが一番輝くベスト状況!
けど、カバーが早い! こんなにも早く……いや、カナに向かっていたもう1人の、リーダー格! 見落としていた。
いい連携するじゃん。まあ受け止めさせる気はないけどね!
今こそ、石! スローイング! 投げるというよりは、石を指に挟み、弾く。武器を持ちながらでも敵の邪魔をするための最適解。ついでに相手からは飛んでくる位置を見えにくくするおまけ付きで。
『カナタが【火槍】を発動』
「おいぃー!」
「すまん!」
前言撤回! 連携ダメダメだぁ!
カナが接近している男の方へと、魔法を放ち、男はそれを回避!
そう、回避してしまった! そしてさっき弾いた石は後方のリーダー格の男の足に直撃!
バランスを崩し、さらにカナの火槍を喰らう羽目に。
カナの魔法をくらって、受け止める体制を崩し、私の突きをまともにくらってる! まともに受けて、あの程度なんでけど。
私の攻撃を受けたことで、リーダーは、隙だらけ! 今はゼロ距離! なら普通に殴るよりも火力を出せる、スプレーが輝くとき!
『消毒用アルコール発射!』
ひゅう! 爽快!
消毒用アルコールの飛距離は目視だけど、20cmも飛ばない。完全近距離用。だからこそ、当たった時の威力はかなり高い。
今ならリーダーを落とせる。
「させない!」
「させっか!」
良い所だったのに。追いついてきたか。
しょうがない。このままカナの方に全力疾走! カナを守るような位置どりが必要だったんだ。
このまま近づいて援護しないと。
「カナ〜お待たせ」
「このまま殺りきるよ!」
前にやったカナとのアイコンタクトを使った魔法のゴリ押し!
敵の攻撃はなんとか避けてはいるけど、こっちの攻撃を当てれない! カナとのアイコンタクト戦術ぐらいなら通じるけど、徐々に慣れてきてる。
じゃあ、ここ! 投擲!
ぬうああ! その軌道あり!? 相手の慣性や動きを計算して石を投げ込んだはずなのに、急停止して避けられた。見た感じ、スキル発動モーションで回避してるわけでもなくただただ普通に止まってるな、これ。物理法則無視はずるいと思うんだけど!?
はい、キツイ。
相手も少し慣れてきてFFをしないような位置どりで対処しようとしてくる。でもその位置からじゃスキル使われても、まともに私を捉えきれないよね!
そんなんじゃ、止められないよ! 最初のぐだぐだ連携よりはマシになったってだけで、多分、即席で作ったパーティーごときの連携ではまだまだ!
人数もレベルも負けている。あっちの方が個々の動きが遥かにいい。
でも対抗できているのは私とカナの
後は連携能力の低さ。相手さんがプロパーティー級の連携だったら私たちはもう何回もやられてる!
それらが合わさってなんとか対抗してるだけ!
パリィ! くっそっからのカウンターに繋げれない!ギッリギッリ!
ああ、キッツイ! かなりキツイ。
さすがに5対2はキツキツ! もうカナのMPはポーションだより。そしてポーションがこのままの勢いだともうすぐ無くなる。
どっかで反撃しないと。切り札は私のスプレー攻撃。けど本当にド・近距離用。私にホウキの間合いすらに入らせないようには徹底してるし。
どこかに隙はないか? 隙、隙……。
『【壊れ装備の倉庫】からゴミが2移送』
『スキル【異次元のゴミ箱】のゴミ経験値が増加。効果が成長』
『ゴミ掃除! 経験値を780獲得』
『レベルが17に上昇』
『ワールドアナウンス:ハジマチにゴミ泥棒がまた、出現。ゴミを盗んでいきました。懸賞金が上昇。クエスト内容が更新』
◆
(そろそろ限界だろ! 大人しく掴まれよな!)
彼らはセツナ&カナタをきっちりと追い詰めていた。多少の誤算もあったが、アッチがそろそろ限界だということは理解している。現時点でのゴミ泥棒の最有力容疑者を追い詰めている。
ああ、莫大な懸賞金が手に入るのを疑ってやまない。
でも、ゴミ泥棒を追い詰めているんだと、最も怪しいと思っているらこそ、彼らはその音に反応してしまった。
『ワールドアナウンス:ハジマチにゴミ泥棒がまた、出現。ゴミを盗んでいきました。懸賞金が上昇。クエスト内容が更新』
突如響く
「「え、お前たちが犯人じゃないやん……」」
全員がこう思ったわけではないが概ね自分達が間違っていたということを認識した。
勘違いだったと、間違っていたと認識した後に取る行動。それは、謝罪!
「すいませんでした!。勘違いで食いかかってしまい! お詫びのアイテ……ブグフッ!」
彼らがしたのは謝罪、戦闘行為の停止、そしてここでの戦闘を無かったことにしてのお詫び。彼らが取った行動は一般的に見れば間違いではない。
普通は、勘違いで襲われて相手側がお詫びをくれるというのだから、普通の人ならまず間違いなく受け入れられる提案……だったはずだ。彼らは間違いを犯した。飢えた動物を前に、動きを止めてしまったこと、ただその一つだけ。
そんな状況を修羅は見逃さない。
(そんな言葉、最も信用してはいけない。通用すると思っていかない。勝負の世界は隙を見せたものから、油断したやつから、やられていく。もう、同じ過ちは犯さない)
隙ができたので攻撃をしただけだ。これが戦いな以上、停戦なんて選択肢はない。どちらかが滅ぶまで交戦は続く。
普通の人には通じたかもしれないお詫びは、彼女には通じない。彼女はゲームの闇を、悪意を知りすぎていた。
これまでのゲーム生で勝手に身についた価値観が、牙を向く。
元々少しずつダメージは蓄積されていた。
リーダー格の男の頭を掴み地面に叩きつける、不意打ち。
そこから頭に振り下ろすインパクト。完璧な当たりによってクリティカルも発生している。
トドメの一撃はアルコール発射。
この犯行に反応できたのは、リーダー格の男がやられた後。皆の意識が完全にワールドアナウンスと、休戦にしかいかない意識の隙間に行われたPK。
(ド鬼畜が! このままぐだぐだやっても損しかねえだろ!? イカれてやがる)
どんなに卑怯と、鬼畜と言われようと、泥臭く、持てる全ての力を使い、勝ちを狙う。
勝利への執着。セツナの本質はそれでしかない。
1ヶ月忘れていた勝つことの楽しさ。楽しいを追い求めるセツナが、最高に楽しいのは戦闘。
(あは、あはは。たっのしー)
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