2 掃除屋セット


 

 強制的にならされた掃除屋クリーナー、ネタ職の匂いがぷんぷんしますね。


「じゃあ、とりあえず掃除セット上げますね? はい!」


 うわーなんか貰った、駄目神マイーナちゃんから。


「後はセツナ自身にも施しをしておきますね。……はい、これで終わりです。セツナの掃除屋という職業は大体何でも出来ます。けどHPは低くいので、超脆かったり。それと掃除すれば経験値が貰えます、掃除屋なので当たり前でしょう。アドバイスはこれぐらいでしょうか。それでは世界を堪能してきてください。よき生活を!」



 

 最後の方はマイーナちゃん、キャラがどんどん崩壊してたような気もするけど、気にしない気にしない。

 さあ舞い降りました、この世界に!

 まずはステータスと装備でも見てみるか。


 【名前】セツナ(女) 

 【レベル】1

 【職業】掃除屋

 【カルマ値】0 


 【HP】10/10

 【MP】100/100


 【STRストレングス】 5

 【VITバイタリティー】 5

 【MAGマジックパワー】5

 【MNDマインド】5

 【AGIアジリティー】 5

 【TECテクニカル】 5

 スキル

 【掃除術】

 ・クリーン【MP10】


 【装備】

 左手・【お掃除スプレー!】

 右手・【掃除用ホウキ】

 

 上半身【清掃着】

 下半身【清掃着】

 特殊枠10/10【異次元のゴミ箱】

  

 

 

 【お掃除スプレー!】 ユニーク・

 ・必要スキル【掃除術】

 ・スキル【お掃除スプレー】使用可能

 ・成長して、どんどん強くなる

 ・ダメージはMAGを参照する

 ・破壊不可

 重量0.25kg

 

 【掃除用ホウキ】 ユニーク

 ・攻撃力:+10

 ・必要スキル【掃除術】

 ・成長してどんどん強くなる

 ・ゴミがくっつきやすい

 ・ダメージはSTRを参照する

 ・打攻撃+5%

 ・突攻撃+5%

 ・破壊不可

 重量0.5kg


 【異次元のゴミ箱】 ユニーク【特殊・10】

 ・必要スキル【掃除術】

 ・スキル【異次元のゴミ箱】使用可能

 ・成長して、どんどん強くなる

 ・破壊不可

 重量1.1kg


 【作業着】 ユニーク【上半身・下半身】

 ・必要スキル【掃除術】

 ・汚れない

 ・全攻撃防御力上昇+5%

 ・成長して、どんどん強くなる

 ・破壊不可

 ・掃除セットスキン強制着用

 重量1.6kg

  

 アホの装備かな? まだ相場を知らないからどんぐらい強いか、とかはわからないけど、絶対におかしいことだけはわかる。特に破壊不可とか絶対にヤバい。私のゲーム知識と合わせると確実にヤバい。そして成長系装備ってのは特にヤバい。育つとだんだんヤバくなっていくのがお決まり。

 地味にきついのが作業着についてる掃除セットのスキン強制着用。これの恐ろしさは後で解説しよう。




 


 改めまして、私完全に掃除屋です! ありがとうございました

 見た目は上下のゴム製らしき作業着を着ている。

 左手には市販のスプレーの完全一致のお掃除スプレー。手に抜群にフィットするのが癪。

 右手には、ホウキ。学校とかでよく使われるサイズのやつね、中高校生用って感じのやつ。

 装備欄には反映されてないけどゴムっぽい手袋と、これまたゴムっぽい長靴? そして顔を覆い隠すマスク! 更にふきんみたいな帽子って言ったらいいのかな? あの、頭にちょこんと乗っかってるだけ、みたいやつよ。

 

 手袋、長靴、マスク、帽子は効果はないけど、掃除セットスキン強制着用で勝手にこの見た目になるんだよね。これがスキンってやつ。武器や装備にお好みの見た目のスキンをセットするのが普通。なのに強制。  

 これが恐ろしい、私的には作業着を着るだけでも結構キツイ。精神的にくるのに、強制的に掃除屋コスをさせられる。これが恐ろしい! 

 

 装備判定されてなくて助かった。この何も効果ないもので貴重な装備らんを潰すわけにはいかない。潰されててもおかしくはない性能してるけどね。元の作業着は。

 極め付けに背中にはゴミ箱を背負っている。見た目完全にやばい人じゃないですか。掃除屋ってのは知ってるけど見た目がネタしてるんだよ。


 

 装備についてるスキルもかなりおかしい。


 スキル【お掃除スプレー!】

 ・消毒用アルコール発射!【MP10】

 

 スキル【異次元のゴミ箱】

 ・ゴミならどんだけでも入る! 【特殊】

 ・ゴミを力に変える魔法のゴミ箱 【特殊】


 

 お掃除スプレーではアルコールを発射するらしい。まだ使ってないので実際にはわからない。

 ゴミ箱の方は何が何だかって感じ。ゴミならいくらでも入ってそのゴミを力に変えるらしい。これはゴミがないと試すことができないからまだ性能がわからない。


 今のほほんと平原にいるけど。これここにいて大丈夫なやつかな?

 まだ一歩を動いていないのだ! なんか足元の周りに光ってる半円があるの。で私はその半円内にいるんだ。 

 多分動いたら何かが起こりそうだからね止まってるのさ。



『もしもーし、いつまでそこにいるつもりですか〜?』

 

 え、いつまでってこの装備の性能を確かめるまでだけど?

 というかしれっとマイーナちゃん、何で話しかけて来てるんだろ。 


『早く街に行きましょうよ〜!』

「え、これ動いたら絶対になんかありますよね?」

『どうでしょうねえ、とりあえず街まで頑張りましょう?』


 私の勘だとここからでたら襲われます。チュートリアルが始まると予想します。


『さあさあ、ここから動かないと何も始まりませんよ〜?』


 神なのに威厳とか何もないね、マイーナちゃん。


 まあここでずっと動かないつもりでもなかったしね。友達と遊ぶ約束もしてるし、遊べるようになるまで進めないと。

 

 よし、動くぞ、動くぞ。とうっ! 


『スライムが現れましたわ! まずはそのお掃除スプレーで退治するのです!』

 ほ〜ら始まったよ。チュートリアルってやつでしょ? 水色で透明なスライム一体がどこからともなく出現しましたよ。 で何だっけお掃除スプレーを使えって?スキルを発動させりゃいいってことかな? 発動方法が、分からん。とりあえず適当に叫んどこう。


 

「消毒用アルコール発射!」


 あれ、何も出ないけど。


『スプレーなのですから、そんなこと唱えなくても引き絞るだけで勝手に発動されますよ?』


 ああ、そうゆうこと? まあそりゃスプレーだもんね。普通は狙いを定めて撃つわ。

 シュッシュとな。

 

『アルコール発射!』

『ミス!』

 

 あ、当たらなかった! 見た目は単純に水を発車口から打ち出してるだけ。だけど射程が短い! 全然飛ばない。これ水だから遠くに行くと落ちるんだよね。始めはまっすぐ15センチほどは勢いよく射出され、キレイにしゅうーんと。


 そしてゲームシステムはこういう系か。

 目の前に青透明なお決まりのウィンドウも出現してお知らせが出てくる。


 来るんじゃないスライム! こっちに来るな。


 そう思うも、まだこの身体に慣れていないからか、私の体にぶつかってくる。

 ああ、この感覚、久しぶりだ。なんとも言えない痛みを受けた私の目に入ったのは"HPバー"だ。この一撃でちょっきりオレンジ表示に入った瞬間だった。

 

 え? キツくない? たった少しの接触でHPの半分を持っていかれた。

 5%カットされてるはずなのに……確かに私、脆いわ。これだと後一発喰らったらやられる。

 集中! スライムの動きは遅い! 油断しなければ、やられない!

 けど近づいてきてるなら、当たる!


『消毒用アルコール発射!』


 一回の発射で削れるのは大体20パー。今の時点での連射可能数が十発。少しぐらいなら外しても許容範囲か。

 でも序盤はMPが厳しいし、コレの本格活用は厳しそうだ。


『消毒用アルコール発射!』

『消毒用アルコール発射!』


 幸い、スライムはそこまで速くない。射程ギリギリで避けつつ攻撃あるのみ! シュッシュッシュ!


『消毒用アルコール発射! クリティカル!』


『吸収!』

『体内に直接ダメージ!!』

『撃破。10経験値』

『完全回復ポーション(スプラッシュ)を入手』 


 なんか最後変なことなってなかった? スライムが消毒用アルコールを体内に取り込んだ。私からは普通に当たったように見えたけど、吸収されたらしい。けどそれが裏目に出たのか消毒用アルコールが体内そのものを攻撃した判定になり、無事お亡くなりにってことかな?

 そりゃアルコールだもんね。取り込んだらなんか悪いことは起こる。モンスターならそれぐらいでやられないでも欲しいけど。

  


 まあとにかく勝った。


『あ、勝てました? この後もどんどん出てくると思うんで倒していきましょ〜う! けど次はホウキで戦いましょうか。その前にポーションで回復しておいてくださいね』

 

 ドロップしたポーションを使ってと。

 このスプラッシュというのは飲まなくても体にかかればいいポーション。

 戦闘で即行で使えるように飲まなくてもいいのが楽。アルコールは撃つたびにMP10消費だからMPは撃った後は気にしとかないとね。



 次はホウキで戦えとご指名が入りました。典型的なチュートリアル型で、持ってるスキルや武器の攻撃方法を教えてくれるタイプだね

 けどこのホウキ単純に殴る用なんだよね。掃除用ってついてるけど、掃除要素はゴミがくっつきやすいってだけっで他は攻撃強化だったりする。

 掃除用ホウキではなく戦闘用ホウキに改名したらどうだね。


『スライムが3体出現しましたわ! 頑張ってください!』


 あ、本当だ。今度は複数戦もこなしながらホウキを使えと。

 けどステータスにそこまで差はないはず。

 とりあえずぶん殴ってみるか。


『スライム(レベル2)」


 この個体共、レベル2か。

 複数戦は一対一に持ち込むのがセオリーだからね。一体に集中してぶん殴ろ。

 確か殴るのは打属性に含められるはずだから、ホウキの効果も存分に発揮される。

 

 私は地を蹴り、ホウキの持ち手で殴る。この少しの動作が相手を殺すと考えるととても楽しくなってくる。

 掴んでるのは、柄の下っ側。本来は穂の部分で殴る設計だとは思うけど、気にすまい。次の攻撃への繋げやすさが段違いだ。

 

 "ダメージ的には16〜17パー!

 あっちのレベルが上がって、私のレベルは上がってないから当然!"

 

 そんな事を考えると同時にそのままホウキをスッと引き、突きの動作。

 突きは足に力を込め、そのまま刺す。最も単純で力が乗りやすい。

 

 21〜22パー。

 ダメージは、乱数込みだとしても上振れすぎてる。ファンタジーでステータスやスキルがあると言っても、ここはVRゲーム。速く、そして大きい力がかかればダメージ計算式にも影響を及ぼせる。

 クソゲーとは言っても動きの面では神ゲーと変わらないレベルで動ける。……さすが初回限定で1時間待たされて同調処理してるだけあるな。これを大手が作ってたらな、と思うほかない。中小企業の貧弱サーバーで捌き切るには限度があるんだよ。フルダイブは。

 故にステータスやスキルもあくまで一つの目安にしかならないと私は思ってる。

 

 

 うん、もうコツを掴んだよ。スプレーの射程よりもホウキが長いから、気をつけてればもうダメージはくらわない。

 こっちの身体にも慣れてきた。

 

『撃破。15経験値』

『下級生命ポーション(スプラッシュ)を入手』 

 

 ふう、3体全部処理終了。他の2体もレベル2だったから、少しダメージを負った。 

 まあポーションが落ちてくれたから問題なし!


『あ、終わりました〜? あ、ポーション使うの待ってください』


 え、なんで? 


『掃除術から【クリーン】を使ってください! クリーンって唱えていただいて』


 チュートリアルの続きってことかな?


「『クリーン』!」

『HPが10回復。体が清潔状態』


 なるほど。回復技だったのね、で体を綺麗にした〜?

 まあ悪いことではないんだろうね。

 『クリーン』ってMP10消費。でHP回復が10。

 MPがHPにそのまま置き換わるだけという、考え方によってはありともなしともどちらとも言えるね。

 

『そんな感じで回復に使える技でもあり、お掃除をする技でもあります。発動対象は別に自分じゃなくてもいいんですよ〜』

 

 うん、無言の圧でこれで掃除しろって伝わってくるよ。


『街までこの調子で頑張っていきましょう!』

 


 

 

 

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