3 ゴミと人とわんこ


 

『街まで突っ切りましょう!』


 えいえいおー!


『少しお待ちになって? そこ、ゴミがないですか?』


 どこ?


『ほら、そこですよ足元』


 う〜〜ん? いや、マジであるんですけど。なんかはわからんけど食べ物が腐ってるわ。これがゴミってことか。

 さっきまでぜ〜〜ったいに無かった。唐突に出現したゴミ!

 まだチュートリアルに続きがあったとは。恐るべし。


『せっかくなのでこう言ってみてください。《ゴミはゴミ箱へ!》』


 え? 言えばいいの?


「ゴミはゴミ箱へ!」

『異次元のゴミ箱へとゴミが入りました!』

『ゴミ拾い! 経験値10獲得』

『スキル【異次元のゴミ箱】の能力発動!』


 ホワイ? 起こったことから簡潔に話していこう。 

 まず、私がマイーナちゃんから言われたことを口に出してみた。そしたら急に足元のゴミが消え去り、ゴミ箱にゴミが入ったとログが流れる。そしたら訳わかんないけど経験値を獲得。最後に能力が発動したらしい。

 いや起こったことはわかったけど、どゆこと?


『どうでしたか! ふっふん。これが異次元のゴミ箱の使用方法です』

 

 勝ち誇ってるのが微妙にウザさを感じないこともなし。


『今のは特殊な方法でして、今教えた言葉を言えば近くにあるゴミが勝手に異次元のゴミ箱行きとなります。別にこの方法じゃなくても普通に背負ってるゴミ箱へと入れるだけでもいいですよ? 当たり前ですけど。他にはゴミ箱にゴミを触れさせて《入れ》とかでもいいです。普通に入れる以外の方法だと、どんな・・・ゴミでも入るのが凄いんですよお〜』


 な、なるほど? 勝手にゴミ箱へと入れるのか。結構便利だけどその場合毎回アレを唱えるとなると少し嫌だ。

 できるだけ普通に入れよう。

 

『そして、経験値を獲得したのは掃除屋という職業のお陰です』

 

 ああ、そんなことも言ってた気がする。掃除をすれば経験値か。なるなる。


『最後に、あれですね。少しゴミ箱の性能見てみてください』


 ゴミ箱の性能?


 【異次元のゴミ箱】 ユニーク・上級【特殊・10】

 ・スキル【掃除術】がないと装備できない

 ・スキル【異次元のゴミ箱】

     ┗【もう腐りたくない】1%の確率で腐攻撃1%カット

 ・成長して、どんどん強くなる

 ・破壊不可

 重量1.1kg


 なんかついてる〜! この、【もう腐りたくない】という名前からなんかゴミの感情が読み取れてしまう。 しかもついててもそんなに効果が薄い! 何だこれ?


『それがスキル【異次元のゴミ箱】の効果の一つ! ゴミを力に変える効果です!』

 

 こ、これが【異次元のゴミ箱】なんというゴミ箱なんだ。つよい。


『これまで倒してきた残骸もゴミにならなくもないんですが、何もしない・・・・・と少し経つと消えちゃいますからね。消えない・・・・内にゴミに出来ればいいのですがね。さて、これで大体はレクチャーすることはおわりましたかね。これからは要所要所でアドバイスをしていくことになりそうです。このまま良き掃除屋ライフをお送りください』


 ああこれで多分チュートリアルが終了ってことかな? なるほど、予想以上に奥深しなゲームだね。

 とりあえず出てくる敵を倒しながら街を目指すってことで良さそうかな。



 スライム、どんなとこにいても見つける。私は狩人。


 フンフンフンフン。

 

 流石にレベルが上がってきたから火力不足になってきたね。

 ホウキを振り回してるだけだから、何回も殴れるし1分もかからないけど、

 

『撃破。20経験値』

 

 ふう。とりあえず勝利!


 

 今私は、街に向かっている。街までは一本道らしくこのまま進んでいけば辿り着ける。周りには木がたくさん生えているね。寄り道もできそうだけど街まで行ってやらないといけないことがあるし積極的に狩りにはいかず出てきたら倒す感じでいこう。


 


 

 順調順調〜!

 今のとこスライムとしか遭遇してない。もう5体は狩ってレベル2になった。もうすぐレベル3もいけるはず。

 草原の一本道、いいですね。とても気分が爽快になる。

 

 う〜ん? 前から人影が。プレイヤーだと思うけど。徐々にくっきりと見えるようになってきた。男性のプレイヤーか。

「!?」

 なんかめちゃくちゃ驚いてるというか、笑いを堪えるというかそんな表情をしているね。

 そんなおかしい要素あったかな?


「あ、どうも?」


 あ、話しかけられた。ここは返事したほうがいいよね。


「あ、はい。こんにちわ」

「じゃあ頑張ってくださいね」


 何が? 立ち去ろうとすんなし。何もないのに話かけてきたのか、重罪ですよ。


「すいませ〜ん。街ってもうすぐですか?」

「あ、はいこのまままっすぐいけばそろそろ見えると思います」


 

 うんいい男性プレイヤーだった。もうそろそろ街らしい。急いで行くのだ!




『レベルが3に上昇』

『おお、いいですね。これで基礎スキルが覚えられるはずです。試しにコボルトに使ってみましょう』


 は? コボルトなんていなそうだけど。だがその疑問はすぐにピュイっと飛んでいってしまう。どこからともなくコボルトが湧いた!

 これが神様パワーか、恐ろしい。 

 このゲームでのノーマルコボルトは比較的小さめ、私やホウキと比較するに141cmぐらい。武器も何も持っていないな。引っ掻きや殴りを主体にしてくるのを想定。そして覚えたスキル内容をチラ見しつつ戦闘態勢に移行する。

  

 まずこれを使ってみるか。


 インパクト。ホウキでの打攻撃。威力増加と少しの衝撃を含む。

 追い打ちかけてストライク!! 突攻撃。威力増加とクリティカル補正。


 それでもコボルトは怯みすら見せず引っ掻きの予兆と見られる手の振り上げを確認。そこからすぐに引っ掻きに入ったのでさっき覚えたスキルでこちらも対抗する。

 ジャストガード。相手の攻撃にピッタリと合わせることで発動。でここからがこれの真髄。ガード後のカウンター補正ストライク! ガードをすることによって次の攻撃は威力補正が乗る。

 ガードの仕様とかはアレに似てるし初見でも感覚でなんとかいける。


 カウンターによる威力補正とストライクの理想の辺りによるクリティカル、クリティカル補正。それで雑魚が倒れないわけがない。


『はいもいっちょ!』

 

 は? 隅に追いやって脳細胞一つだけで対処させていたマイーナちゃんの声が神らしくなっ! いやマイーナちゃんの声っぽくなっ! とか思っている暇がなかった。もう一回遊べるってよ! 


 コボルト剣持ち追加一丁!


 とりあえず《スライド》を使いつつ相手の横に回り込む。そっからはさっきと同じように、殴るガード殴る。終わり。

 

『は〜いどんどん』

 

 ふ ざ け ん な。斧持ち、返品オネシャス! まあ斧だろうと剣だろうとホウキだろうと、私の敵ではないんで。

 

『は〜いじゃんじゃん』


 殴る、叩く、終わり!


『はいどんどん』


 4ね。


『じゃんじゃん』


 殺す。

 

 そんなやりとりを十回は繰り返した時、気づいてしまった。

 わんこそばやん! 

 いやわんこってそういう意味じゃない……そもそもそばですらないし。

 いつかは覚えてないけど記憶がある。この掛け声は絶対にそう! で、なんかキツくね? 最初の頃よりもコボルトの動きが俊敏になってきて捌くのが辛い。

 やばい、どうにかして止めないと。

 わんこそばって確か終わるにはなんかあるんだったよね。記憶を掘り起こしている最中でも永遠に追加されるわんこ……

 

 

 ◆

 てええい! 

 く、危ないとこだった。お椀に蓋をして入れられないようにするというのを思い出し、そこからコボルトがある一点から湧いてるって気づいたら一瞬だった。体で底を防ぐ! 


 そうすることによって無限コボルトを防ぐことができた。


「マイーナちゃん! 何、コレ」

 

 これは私でも怒りますよ。この忍耐深いという噂の私でも! 


『おめでとうございます! コボルトハント、記録は23体です! ハッ! わたくしは一体何を。……何故かわかりませんがこうしなければと、こうするのが当たり前のように……』


 このゲームの闇を見た気がする。忘れよう。23体も狩ったから経験値も素材もウハウハ……じゃない!

 え、経験値が一切入ってない! で、ドロップが、コレよ? キレていいと思うわけ


 わんこそば・食料

 効果:10分間STR、AGI増加・小

       HP回復・小

       犬系モンスターへのダメージ低下・大

 説明:無限に追加される恐怖の麺。なんでこの麺はたくさんの小お椀に入ってるんだ。それにほんのりと獣の匂いが……

 

 

 この説明的にも、効果敵にも、やはり……


 さすが自由を追い求めすぎてクソだと大人気のFWOだね、やる事がちがう。

 


 一体私は何をしていたのだろうか、無駄な時間を過ごしてしまった。先を急がなければ。

 私は「最もゲームらしくないゲーム」のほんのり残ってるゲーム部分を先に引き当ててしまった。

 

 本来なら倒した数に応じた報酬が貰えると、本来なら序盤のこんな時には出ないと知ったのは、もっとずっと先のことだった。つまり……◯◯◯ピーーーだよ◯◯ピーが!タヒね!ピーー! 


 ◆コボルトハント。

 ミニゲームの一種。永遠に湧くコボルトを何体倒せるかというチャレンジ。

 たまに煙狸や妖狐が出てきて強制終了する。なぜか、もうそれはコボルト・・・・ではないからだ……狸と狐なのである。

 

 

 

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