PS人外のクソゲープレイ記〜ネタ職【掃除屋】になったけどいつものように悪役ムーブします
残照波
1章 ゴミ騒動
1 始まりすらクソ
キャラクターの脚力だったら飛び越えれそうな障害。
ボスを倒さないと進めれないフィールド。
もう、当たり前に浸透している。ゲームという娯楽性を保つためには、仕方のないことなのだ、と諦められて……
フリーダム・ワールド・オンライン。通称FWOは些細な常識やあるあるをぶっ壊す価値観を持たせれるように、この世に生まれた。
敵のHPが見えるゲームなど山ほどある。
「ボスは見えないようにして雑魚は見える」や「全モブ共通で見える」など。
言わせれば、共通性があり、そうさせる意図が、必ずあるのだ。
FWOには共通性など全くないし、攻略のための意図などは微塵もない。
ただあるのは、悪意だけだ。
見えないからこその絶望、見えるからこその絶望。
このモンスターは見えない方が心を折れる、逆に見せて回復させればいい。そんな討論によって出来たのが、全く共通性がない環境。
作り込みを完璧にすることによって従来のゲームとは違うものが、生まれてしまったのだ。
他の追随を許さない自由。そこに込められた真の悪意、捻くれ思考、ご都合すぎる自己満。
「最もゲームらしくないゲームへようこそ」
フリーダム・ワールド・オンライン公式ホームページ。
◆
いよっし!
手に入った!
ある巷で人気のVRMMO、フリーダム・ワールド・オンライン!
かなりクオリティーが高くて想像以上に奥が深いと超話題!
ゲーマーの私としては手に入れたい代物!
それが今! 手に入ったのです!
金欠だったんだよね、しょうがない。リアル親友はもう遊んでるんだよ。
待ってろ! 今行くぞ!
意外と大きんだよね。このカプセル型のやつ。まあベッドの代わりになる超高性能な機種なんだけど。
その超高性能な機体の性能をフルにリソース使ってるからすごいお高いんだよね。
さて行ってみよう!
『フリーダム・ワールド・オンラインが起動されます』
『身体同調を開始します』
『身体同調終了まで、少しの間仮アバターでお遊びください』
へえ。
な、なるほど? まだ身体同調とやらが、終了していないのでとりあえず勝手に遊んどけってことらしく、街に飛ばされたよ。
なんかすっごい違和感を感じる。五感が完全に機能してないのかなー。
見えるのもちょっとぼんやりしてるし、音なんか全然聞こえない。
一応仮アバターとやらは私よりも少し目線が高いような気がするかと思えば、頭の上に何か違和感を感じたり、歩くバランスが保てなかったり、急に視線が低くなったりと、ものすごく身体がいじくりまわされている。
さて! まあせっかくお楽しみ出来るし、1秒たりとも無駄には出来な〜い!
人で賑わってる。けど、な〜んか、不思議なんだよね。私、結構ピカピカ光ってるのよ。この仮アバターが。
なーのに誰も反応しないというか、反応できていないというか、私認識されていないというか。
多分、私からは光って見えてるけど他の人からしたら普通のアバターになってるのかな?
わからぬ。
とりあえず街の様子でもみ〜てよっと。
コツコツ。
おおー音が、音がぁ〜聞こえる!
さっきまで全然聞こえなかったのに!
少しづつ同調が進んできてるってことかな? けど、暇です。みてるだけで、何も出来ん。
むむ?
なんか街中に変な光ってるものが落ちてるよ?
見るだけ見るか。
『ゴミを拾いました』
なんか近づいて手を伸ばしてみたら、なんか拾いました。ゴミだそうです。
それとゴミって、もっと詳細な鑑定とか出来ないの?
『限定、超鑑定虫眼鏡を貰いました』
『たくさん鑑定してみてね!』
わーい無駄に凝ってる〜!
いつの間にか手に虫眼鏡があるよ。
さてそれでは、鑑定!
【紙ゴミ】ゴミクッズ
・何にもないただのゴミ。そこら変に落ちてる
・拾っても何もない、ただのゴミ
・紙ゴミだから燃えやすい
・拾ったらカルマ値が上昇するかもしれない、けどゴミ
・ゴミを拾って持ってても、拾えるアイテムが減る、つまりゴミ
重量0.01kg
『注意お試しモードでカルマ値に変化しても、通常には反映されません』
『カルマ値が+1されました』
しっかりと、ゴミでした。それにしても、ゴミゴミやたらうるさい説明だな。この説明を見れば完全にゴミだって理解できる。
あと何? ゴミクッズ? 完全に馬鹿にしてるわ。
けどカルマ値が1上がった。上がった方がいいのかな? ゴミ拾いが悪行ってこともあるかもしれないけど、さすがにないと信じたい。
う〜ん。この説明的に良い事として認識されてそう。
このモードが終わったら何にもないらしいけど。
だ〜が! これは遊びに使える!
街の様子見も暇してたんだよね。今から、どれだけカルマ値をあげれるか1人ゲームします!
うん1人寂しい。早く同調終了しないかな?
完全に1人ではないんだよ? 人はたくさんいるんだ。だが、話せると思うかい? つまりはそういうことだ。
あ、ゴミ見つけた!
『ゴミを拾いました』
あ、これ生ゴミじゃん! さっきの【紙ゴミ】って鑑定結果から、【生ごみ】に変化してる。それ以外は腐ってるから食べるとお腹を崩す、とか、重量が少し変化してる。
バナナの皮のゴミだった! 凝ってるなあ?
ゴミに種類を持たせる理由がわからないけどさ。
ツーン!
臭えー臭う〜!
うーんんん?
なんか急にめちゃくちゃ臭くなった。
これは異臭だああ! 腐ってる食べ物から発せれられる特有の臭い!
なんて都合よく、嗅覚の同調が進むん。
他にもプラゴミもあるし、鉄クズとか。
ゴミなのに種類があるとか凝りすぎですよ?
眼も段々調子というかぼやぼやしなくなってきた。
そろそろ、同調終了しないかい?
もう飽きてきたよ。
まあ感覚の適応のために必要な時間だってことはわかってるんだけどさ、つまらん。
『身体同調が終了しました』
『お試しモードを終了します』
『アバタークリエイトへと移ります』
よ、ようやく、終わった!
30分ぐらいもゴミ拾いしてたよ。
『名前を決めてくださ……干渉が行われました』
「貴女がゴミ拾いを?」
干渉?
ん? 誰だ、貴様! なんかようわからんことが起こってる。アバター設定をしようとしてたら、急に誰か現れた。
「申し遅れました。わたくし、神様。今貴女の目の前にいるの」
え、はい、そうでしょうね? そりゃ目の前にいるってのは分かる。けど神様?
え、この美人、黒の長髪に、めちゃくちゃ大人っぽい。で何だっけ? 神様?
「わたくしはマイーナ。ええと、何を司ってるんでしたっけ。いろい……」
あ、この美人ちゃん、マイーナちゃんって言うらしいけど、ポンコツだあ。
自分が何の神かを忘れちゃったんだって。ポンコツ成分がたくさん出てそうですね。煮込んだらポンコツ汁になりそう。
「まあいいのです。とにかく、重要なのは貴方がゴミ拾いをしてたことです」
まあよくないと思うよ? それで、私がゴミ拾いしてたことが重要だって?
「わたくし、掃除というか、綺麗にする神様みたいなものでしての。本当はもっと…………まあいいですわ。それで貴女に職業を選ばせたいなって。ところで貴女というのも不便ですわね。お名前を教えてくださいませ」
「
「あら、これから行く私達が管理する世界でもそう名乗りますの?」
ああー、そういうこと。
それならいい名前があるんだよね。
「セツナです」
そう、ちょっと読み方を変更するだけでそれっぽい名前になるのです。ゲームでは基本この名前を登録する。
「セツナ、でいいんですね?」
「は〜い」
「それじゃセツナ、アバター生成します?」
なんで疑問系なんですかね? やらないと出来ないでしょうが、ゲームが!
願いしまーす!
あ、現実の私現れたああ!
ええと、まずはこれどうすりゃいいんだ! 細かいところまでクリエイトできるからどっから決めていいものか。
「髪の長さとか色とかいじってみたらどうです?」
忠告サンキュー!
ええと、まずは髪か。ショートからロングへと伸ばしてと。肩にかかる感じのロング、我ながら意外と可愛いぞ?
次!色、色ねえ。あーんま、色をいじる気になんないな。そのまんま黒髪でいいや。
いや、よくない。このままではなんか嫌。けど大幅に変えると、私がキツイ。
昔、いやそれほど昔じゃないかも。私、ゲームたくさんしてるからその影響で少し感覚がわからなくなることがあるんだよね。
……とにかく昔にピンク髪のゆるふわっとした雰囲気にしたアバターに姫コスさせたんだよね。
あの時の周囲の視線。思い出したくない。あのゲームには色々とあったのだ。
紺色とかならまだ許容範囲。
それでいこう!
……なんだかんだ毎回おんなじような見た目になるんだよなぁ。
身長とかはいじらないでと。
大きく身長とか体型を変えると体が動かしにくくなるって私は知っている。姫コスしたあのゲームの時も少し身長いじって低くした。
そしたら動きにくくて仕方なかった。バランスというか、身体の動かし方自体が変わってくるからね。動きを掴むのに丸1日かかったんだから。元の動きができなくて最初の方は全然避けれなかった。
いくら最新ゲームだからって身体のバランス調整というシビアな分野をカバーするのは難しい。
だからこそ、変えない。動きに慣れるのに時間かかるから嫌なんだよ。
「意外とよく出来てるではありませんか? 可愛らしいですよ?」
ふう、意外とめんどくさかったよ、アバター。
眼の色とか、身長、1番めんどくさかったのが顔。まあほとんどいじってない。少し小顔にして美容をしておいただけ。
今のアバターは紺のロング。伸ばしたのははマイーナちゃん意識。
金眼の身長167㎝。
その他諸々、変化なし!
いじったのは瞳の色と、髪の長さ。それに一応すこーし髪色も変化してるけど、あんま黒髪と変わらないようにしてるし。
◆
うんうん、いいではないか。
「これで決定で」
「わかったわ。じゃ、次は職業選びましょ?」
ああ、めちゃくちゃいい笑顔、可愛い。
「けど言った通りに、セツナには職業見積もりしてきてあります。その名も
え、私ゲームの中で掃除屋するの?
「もう決定でいい? いいよね? というか、なって下さい! お願いします!」
神の威厳どこいった!? 私がそんなことを思うぐらいに、綺麗で美しい、土下座。
いやさ、私思うんだよね。神がたかが人間に跪いたり、お願いするもんなのかと。最近の小説だったり漫画は神が神していない。もっとドーンと構えておいてほしい。神なんだからそれっぽい力でなんとかしてほしいものだ。
「いや、他の職業もどんなのか見せてください」
どんなに綺麗に土下座をキメられようとも別に掃除屋をしたいわけではない。
「この掃除屋、なんと! ユニーク装備が初期セットに含まれています! しかも四点! お得ですよ!」
あれだ、テレビとかの通販見てる気持ちだ。口先だけなせいで何にもわからんないけど。
「セツナだって強い方がいいですもんね!? ね!?」
押しが強い!
「掃除屋、なってくれますわよね?」
「だから他」
「掃除屋なってくれますわよね?」
言葉遮るのお上手ですね。でも。
「だか」
「なってくれますわよね?」
◆
はあはあ、し、しつこい! 三十回はお断りした。
そして……既視感! これ、RPGによくある、「はい」って選択しないと進めないやつじゃん!
けどさ、自由がテーマのFWOでコレはあかん。しかも職業選択よ? コレからずっとやっていくことになる職業を決める段階でのこれは紛れもないクソだとしか言いようがない。
これが神のやることか? いや確かに、神だったらなんとかしろっていったけども! これがゲームにとって許されていいのか!
……いや、許されてるんだった。「最もゲームらしくないゲーム」と公式が謳うだけあるな。他のゲームでは絶対にありえない。
『
うっ。なんか今までと違って直接頭に響いてくる。それに加えて音が重なっていてよく聞き取れなかった。
なんかヤバい選択しちゃったかな。
「な、なんて?」
「……ええと職業見ます? と言ったのです」
「はい!」
ここは喜んで、「はい」でしょ!
『職業:
は?
「できれば使いたくなかったですけど、この調子だと頷いてもらえなさそうだったので、使っちゃいました。神力」
私はゲームの強制力を舐めていたのかもしれない。自由すぎるゲームに限ってそんなことはしないだろうと。
このゲームは、限りなくリアルを追い求めたが故に自由なんだ、誰かがそんなことをレビューに書いていたのを思い出した。リアリティー、
そう考えると今回もマイーナちゃんの願いと、願いを叶える力が揃っててそれを使っただけなんだろうな。
リアリティーがあるからと言ってクソなことに変わりはないけどね!
リアリティーを求めすぎてクソ。この言葉こそがFWOを最も適切に表した表現だと私は思った。
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