第6話
「移動魔法とかないんすか……」
「無いことも無いが、絶対座標は術式構造が複雑になる。燃費が悪い」
まさかガソリンが切れるとは思わなかったっす……ガソリンスタンドはこの状況だと危なくて使えないですし……。
てか私が先輩の論文を背負って歩くのは納得いかないっす。
魔法で力持ちになれるくせにー!!
「そういえば他の人たちってどこに避難してるんすかね。自衛隊さんに聞けば良かったっす」
「人がいないところだろう」
「それって矛盾してません?」
「マッピングの更新にラグがあるだけの話だ」
人間の生体反応をリアルタイムで追ってるわけじゃないって事っすか。
それなら私たちが静かに国道を歩けてるのも頷けます。
「だが何事にも例外はある。例えばあれだ」
「え? なんすか?」
嫌な予感がして目線を上げると、見たこともない鳥が飛んでます。
いや鳥じゃないっすね。わかってますって。
「先輩、解説」
「竜だな」
「竜て……」
「グギャアアアアァァァァァッッ!!!」
勘弁して欲しいっす。空だから良くわからないけどでかいっすよね!!? あれ!!
あっけらかんとした空に真っ赤な翼を広げる竜がこちらに向かってきます。
「せせせ先ぱ——」
「荷物飛ばされるなよ」
先輩が軽く跳躍します。
動作は軽いんすけど高さは半端なくて、多分10メートルぐらい? で竜の進行方向を妨げます。
「よう、新しいサンプル。殺す前に何かしてみろ」
竜はその勢いのまま大口広げて先輩を喰らおうとしますが、先輩は空中でもう一度跳躍してそれを躱します。
いやそれだと私の方に来るんですが!!!
「いやーーーーー!!!!!」
必死に竜の進行方向と直角に走ります。
生きてます? 私生きてます?
「ほらこっちだ」
先輩が竜を誘導します。
私のこと忘れてないっすよね?
ただ明らかに先輩の存在感が強いので、私のことなんて見えてないみたいっす。
空中で跳躍を続ける先輩を目掛けて、竜がまた大口を開けます。
「そうだ、それだ!!」
真昼間の辺りがカッと光ったと思ったら、竜の方から何か——
ズドォンッッ、と大きな音を立てて光の柱が先輩を襲います。
「先輩っ!!」
光が収まると先輩がいたはずの場所には……例の黒い球が浮かんでます。
「悪くない。後はお前を解剖すれば
無事っすね。焦ったー……。
竜がさっきの光線の反動でその場に留まってる間に、先輩の黒い弾が細くねじれて一本のドリル? みたいに変形します。
そこからすごい速度で一直線に竜へ向かうと、竜の上顎を口内から頭まだ貫いて国道のど真ん中にそのまま突き刺さりました。
「……先輩、私のこと忘れてません?」
「ん、ああ。いや、思い出したぞ」
「それ忘れてますって!!」
ちくしょう、たった一人の同行者を蔑ろにしないで欲しいっす!!
ぷんぷん怒る私を尻目に竜の解体を進める先輩。
と、その遥か向こう側からまた何かやってきます。
「先輩また!! ——あれ?」
車……てか戦車?
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