第4話



もう限界か。ここで死ぬのか、俺たちは。

わけもわからぬまま平穏な生活を踏み躙られ、化け物どもに蹂躙されるのか。


先に逃れた住民たちは無事なのだろうか。あれだけの人数、年寄りも子供もいた。


俺たちのうしろには逃げ遅れた住民たち。そして先に逃げた者を助けるために化け物たちを惹きつけると残った有志たち。



時間は稼げたろうか。俺たちは一体、どうなってしまうというのか。



「隊長!! もう弾が……!!」

「……良い。使い切る前に、一般市民へ銃を配ってやれ」

「それは……いえ……わかり、ました」



東京に化け物が現れたと聞いた時は、信じられなかった。

報告におびれが付いて、捻じ曲がった報告だろうと。


いざ南下してみれば、見ての通り本物の化け物どもが湧いているじゃないか。

ここ数時間の間に、風の噂で東京が落ちたとも聞いた。


電波妨害で無線も繋がらない、当然ネットも。

本部の応援は期待できない。

隊員の士気も尽き始めている。



最後はせめて、苦しまずに。



「なんだ、自衛隊か」

「……住民の方ですか。ここは危ない、建物の中に入ってください」

「貴様ら、魔法は使えるか?」

「……なんですと?」


頭がおかしくなってしまったか。無理もない、もうここが持たないことにも気づき始める頃だろう。

その方が幸せかもしれないな。



「期待はずれか。まあいい。平野、ここにいろ」

「うっす!」

「危ない、下がってください!!!」

「良い、いかせてやれ」



もはや俺たちに、彼らのような者を救うことはできない。

死に様ぐらい己で選びたいものだ。


……俺もできるなら、隊員たちや住民たちが殺され行くのを見たくはない。

だがせめて、責任として、最後の一人となろうとも抗い続けよう。



「私も行こう」

「うるさい邪魔だ下がれ」

「威勢の良い……勇敢なのだな、青年」



銃も持たずに、殴り合いでもする気か。

武器もなしにあの化け物どもの前に立つなど、普通の精神状態では考えられんな。


そういえば意外と良い体格をしている。

大人しそうだが、意外とスポーツマンなのか。



青年はふう、とため息を付いて前に出る。

……いくら頭がおかしいとはいえ、この落ち着きはなんだ?


青年は胸の前で右手の小指と薬指を立て、弾幕の銃声で聞き取ることもままならないが小さな声で確かに呟いた。



「陽式、雨垂あましだれ



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