第3章66話:戦いの後

残ったグランウルフたちは、もはや勝ち目はないと見たか、逃げ帰っていく。


さすがに今ここで、追撃を仕掛ける意味はない。


逃げていくグランウルフたちの背中を見送る。


そのとき、一歩、足音がした。


足音がしたほうを振り返ると、セレーネがアリスティをじっと見つめていた。


「あんた、名前は?」


セレーネが問いかけてくる。


アリスティは答えた。


「アリスティですが」


「そう。あたしはセレーネ。セレーネ・リーンブライト」


「あ、はい。よろしくお願いします」


アリスティはそう答えた。


セレーネは苦笑して、告げる。


「まったく……あたしがタイラントワーウルフを倒して英雄になるはずだったのに」


ため息をついてから、セレーネは続けた。


「まあ、今回はあんたに譲ってあげるわ」


「アリスティ!」


と、そのときクレディアたちが声をかけてきた。


「びっくりしたぞ。まさかタイラントワーウルフを倒してしまうなんて」


ヒューリスも同意する。


「そうですよ! アリスティさんがこんなに人間離れしているとは思いませんでした!」


ヴァルガンもウンウンとうなずく。


さらにオーファンがやってきて言った。


「ホッホッホ! アリスティ殿には度肝どぎもを抜かれたわい」


バルードも頷く。


「やりやがったな。ますますパーティーに来てほしくなったぜ」


「私たちじゃ、アリスティさんの実力についていけないですよ~」


サラがそう言って苦笑した。


そして最後に男性3人組たちも口々に言ってくる。


「あんたすげーな! マジで感動したぞ!」


と、長髪。


「これは本当に尊敬するよ」


と、短髪。


「姉貴って呼ばせてください!」


と、角刈り。


いや角刈りさん、それは辞めてほしいです。


「み、みなさん、褒めすぎですよ」


と、アリスティは言う。


さらに話題をそらした。


「あーほら! みなさん、勝利をねぎらうのもいいですが、素材を回収しませんと!」


そう。


今回はタイラントワーウルフと、グランウルフロード4体を討伐できている。


アリスティを賞賛するよりも、遥かにみんなで盛り上がれる話だろう。


すぐにバルードが反応し、提案した。


「そうだなぁ。まずはグランウルフに関しては山分けでいいかな」


誰も異論はなかった。


ここにいる者たちのレベルでは、特にグランウルフの素材を欲してはいないというのもあるだろう。


バルードは続けた。


「グランウルフロードはどうする?」


オーファンが答える。


「貢献度に応じて分配じゃろうな」


そこにクレディアが口を挟んだ。


「そこの3人にも分配すべきだろう。彼らは直接グランウルフロードとは戦っていないが、グランウルフをひきつけてくれた」


それを聞いた男性3人組、長髪の男が言った。


「まじかよ、ありがてえ!」


クレディアの提案によって、男性3人組にもグランウルフロードの素材が渡されることになった。

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