第3章56話:乱戦

グランウルフたちをなぎ倒し、全員がセレーネの背中に追いつく。


「あら? あんたたち、臆病風おくびょうかぜに吹かれてたんじゃなかったの?」


セレーネが挑発するように言った。


バルードが答える。


「ああ……でもな、みんな尻込みするより、攻め込むほうが性に合ってると気づいたんだよ」


「ふうん? まあせいぜい、あたしの足を引っ張らないでよね!」


セレーネが近くのグランウルフを蹴り飛ばした。


「森で戦うよりラクでいいわ。いくらでも大技がぶっ放せるもの!!」


セレーネが横に魔剣を薙ぎ払う。


紫電が走りぬけ、それだけで10匹以上のグランウルフを蹴散らしていく。


多数を相手にするときは、魔法のほうが圧倒的に有利だ。


「必殺! 4本同時射撃ですよ~!」


サラさんが曲芸みたいなことをやっていた。


しかも全弾命中だ。


すごい。


ヒューリスが言う。


「こんな戦いに参加できるなんて! あたしたち、歴史に名が残っちゃいますね。隊長?」


「さすがにそこまでではないが、アトラミルカでは自慢できるだろうな」


クレディアが微笑む。


ヴァルガンが告げた。


「……まずは無事に生還することだ」


ヒューリスとクレディアとヴァルガンが連携によって、確実にグランウルフを仕留めていく。


全員の士気は高い。


みんな、戦いを楽しんでいる節さえ感じられる。


しかし――――


そんな高まった士気をへし折ろうとする者たちが、突撃してくる。


グランウルフロードだ。


もともといた3体に、アリスティたちが戦っていた1体が合流し、計4体。


1体でも厄介だったグランウルフロードが4体。


それが、アリスティたちのもとへ突進してきていた。


「ハァァッ!!」


セレーネが疾走するグランウルフロードたちの中心を狙って魔法光を放つ。


その魔法光を避けるようにして、左右に2体ずつ分かれたグランウルフロード。


「一匹ずつ処理するわよ!」


セレーネがグランウルフロードの一匹に攻撃を仕掛ける。


バルードがその隣のグランウルフロードに応戦した。

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