第3章54話:ウルフのすみか

しばらく森を駆ける。


グランウルフロードの背中は遥か遠い。


たまに見えるが、すぐに木々や草に阻まれて、見えなくなる。


そんな様子を眺めながら、ヴァルガンが言った。


「……妙だ」


アリスティが尋ねる。


「何がですか?」


「……異様に遅い」


「遅い?」


アリスティが聞き返すも、ヴァルガンはそれ以上何も言わなかった。


遅い、というのは自分たちのほう?


いや。


グランウルフロードのほうか?


つまり、グランウルフロードは全力で走っていないということ?


なぜ?


その答えは――――


すぐに判明した。


ふいに視界が明るくなった。


森に囲まれた大きな平地に躍り出たのだ。


そこは。


一言でいうと。


グランウルフの巣だった。


森の中に切り抜かれた巨大な広場。


そこに数百匹以上のグランウルフがたむろしていた。


「おいおい、なんだよこりゃあ……」


バルードが立ち尽くす。


ヒューリスが突然、指をさした。


「あれを見てください!」


その示唆する先にいたのは。


3体のグランウルフロード。


さらにもう1体。


赤色のウルフがいた。


二本足で立っている。


なんだあいつは?


アリスティがいぶかしげに思っていると、クレディアが震えたようにつぶやいた。


「あ、あれは……タイラントワーウルフ!?」


タイラントワーウルフ……。


初めて聞く名前だ。


「間違いない。ウルフ最上種の、タイラントワーウルフじゃ!」


オーファンが驚愕している。


「う、嘘だろ。タイラントワーウルフはAAランクだぞ!? 勝てるわけねーよ!」


男性3人組の一人、角刈りの男が怯えたように言った。


そのときだった。


横合いから、一匹の魔物が襲い掛かってきた。


グランウルフロードだ。


こいつ、さっき自分たちが戦ったやつだ……!


そのグランウルフロードが、アリスティたち11人に対して体当たりのごとく突っ込んでくる。


アリスティたちは慌てて避けた。


そして――――


「アオオオォォーーーーンッ!!!」


グランウルフロードが遠吠えをする。


何のために遠吠えを?


そんなことは決まっている。


ここにいる、


全てのグランウルフと、


グランウルフロードと、タイラントワーウルフに、


こちらの存在を知らせるためだ……!




―――――――――――――

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