第3章52話:敵の戦略

「判断が早い! 頭の良い魔物じゃな」


オーファンが、グランウルフロードをそう評する。


こ、これが魔物の動き?


アリスティは驚愕する。


達人同士のつばぜり合いのような攻防だった。


明らかにグランウルフロードは他の魔物とは一線を画している。


「グランウルフは知性が高い魔物ですからね~」


サラの言葉にバルードが同意した。


「ああ。それもロード級となると、人間より賢いかもしれん。なかなか戦いがいがありそうだ」


血湧き肉踊る、とばかりに戦意をみなぎらせるバルード。


さすがにベテランの冒険者ともなると、肝が据わっている。


「お、おい、敵が増えすぎじゃないか!?」


男性3人組の一人、長髪の男性が怯えたように言った。


彼の言う通り、グランウルフがあちこちに出現している。


ヒューリスが叫んで注意喚起する。


「しかもこいつら連携してますよ! さっきより統率の取れた動きです!」


「グランウルフロードが統率してるからだろうな」


クレディアがそう見解を示した。


そして、各々が戦いへと身を投じる。


あっという間に、場は混戦となった。


あちこちでウルフと南西班による戦闘が巻き起こる。


一番激しいのは、やはりグランウルフロードとセレーネの戦い。


間合いに入りたいグランウルフロードを、セレーネが魔法で牽制している。


二人に邪魔が入らないように、セレーネに近づくグランウルフたちをミニドラゴンが一蹴する。


傍目にはグランウルフロードとセレーネは互角だ。


このままセレーネが敵の親玉を抑えている間に、他のみんながグランウルフを駆逐していけば勝てるはずだが……


しかし、事はそう上手く運びそうになかった。


なぜなら他の場所でも苦戦が繰り広げられていたからだ。


「くっ、なんて数ですか~!」


サラが歯噛みしながら矢を放つ。


そう、とにかくグランウルフの数が多いのだ。


50体……いや、100体以上いるかもしれない。


しかも、これまで戦ってきたグランウルフに比べて、明らかに練度が高いのだ。


全員でヒットアンドアウェイな攻め方をしている。


アリスティも戦っているが、なかなか討伐数を稼げない。


なぜなら、こちらが一匹倒したら、他のグランウルフは距離を置いて退避し始めるからだ。


なんというか……。


まるで、数の有利に任せて、持久戦を仕掛けているような動き方。


それがグランウルフの戦略なのだとしたら、見事である。


こちらは11人とミニドラゴン1匹しかいないのだから、長引けば疲れが溜まるこちらが不利だ。


グランウルフロードが戦略を指揮しているのか?


バルードが説明していたように、相当頭が回る魔物のようだ。








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