第3章47話:出発

「待たせたな!!」


そのとき、クレディアさんが声を張り上げた。


「察している者もいるだろうが、お前たち南西班は、スタンピード首領の発見と、討伐を目的としたチームである」


なるほど。


バルードさんたちが推測した通りのようだ。


「さまざまな調査でわかったことだが、スタンピードの首領は、南西にある【グラントールの森】にいる可能性が高い」


さらにクレディアが言った。


「ちなみに南西班には私も参加させていただく。では、さっそく参ろうか」


クレディアさんが先頭を切って歩き出す。


「よし、じゃあいくか!」


バルードさんが言った。


アリスティも歩き出した。







15名ほどの即席部隊がさっそく歩き始めた。


向かうは南西方面。


まずはアトラミル平原があって、


南西に広がる森を抜け、


さらにグラントール草原を抜けた先に、


目的地である【グラントールの森】がある。


まとめると。


平原→森→草原→森


という順番で進むわけだ。






まずは最初のアトラミル平原。


クレディアが先頭に立って歩く。


そのとき、崖のように切り立った丘が目の前に現れた。


迂回しようとしたクレディアだったが、そのとき……


一人の女性が班から飛び出し、崖をジャンプして上り始めた。


曲芸のような身体能力だ。


ミニドラゴンを連れている女性。


たしか名前はセレーネといったか。


「おい!」


クレディアが呼び止めようとした。


セレーネは、崖の途中で振り返り、見下ろして告げた。


「全員で固まって移動しなきゃいけないルールはないんでしょ? なら、あたしは先に進ませてもらうわよ」


そのまま崖を上りきって、一人で進んでいった。


そんな姿を見て、班にいた者たちが言った。


「まあ、一緒に行動する理由はないわな」


「ボスの討伐は早い者勝ちだしね。こっちも勝手に行動させてもらうわよ」


セレーネの行動を機に、それぞれが各々に行動を始める。


崖を右に迂回する者たち。


左に迂回する者たち。


あるいはセレーネと同様、正面から登っていく者たち。


バルードはクレディアに尋ねた。


「おい騎士さん、放っておいていいのかよ?」


「まあ構わんだろう。進む方角が一緒であれば、問題ない」


いいのか。


結局、バルードのパーティー以外と、クレディアの配下の兵士以外は、みんな好きに散ってしまった。


アリスティは尋ねる。


「バルードさんたちは行かないんですね?」


「ああ。あの女騎士さんから離れる利点がないからな」


バルードが答えた。


と、オーファンが補足するように説明する。


「クレディア殿についていったほうが、結果的に近道になるとワシらは判断したのじゃ」


サラが合いの手をうつ。


「班の中で最も情報を持ってるのはクレディアさんですからね~。ならクレディアさんについていくのが最善でしょ~」


なるほど。


合理的だ。


最後にバルードが締めくくる。


「まあ、欲するならば遠回りせよ、ってやつよ」


ほうほう。


大陸のことわざかな?


まあ、アリスティもクレディアから離れるつもりはない。


自分で地図とにらめっこをするより、クレディアについていったほうがラクだしね。


「我々は左に迂回する。いくぞ」


クレディアがそう言って、足を進めはじめた。


アリスティたちはその背中を追いかけていく。







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