第3章44話:領主

その日のうちにお返事の手紙を出してもらった。


翌朝。


アリスティが冒険者ギルドをおとずれると、ふたたび受付嬢オリンから呼び出される。


領主さまから新たな手紙が届いたようだ。


オリンが手紙を読み上げてくれる。


そこにはボス討伐作戦の集合日時が書かれていた。


――――本日より7日後。


――――午前9時。


とのことだった。








そして7日後。


集合場所にアリスティは訪れていた。


アトラミルカの正門前。


驚くほどの数の戦士がそこに集まっている。


200名ほどはいるだろうか?


衛兵や兵士とおぼしき格好の者。


冒険者のような風貌の者。


騎士らしき者まで。


この戦いに備えて、戦える者をかき集めてきたのだろう。


戦士たちは戦いを前に、仲間と話し合ったり、だべったり……


黙って集中力を高めたり、している。


――――彼らの前には、一人の女騎士が立っていた。


茶髪をポニーテールにまとめた女性。


黄色い瞳。


切れ長の眉。


真面目で毅然とした雰囲気の女性だ。


騎士服にマントを羽織り、腰にはショートソードを携えている。


いかにも騎士然きしぜんとした格好である。


その女騎士の隣には、一台の高級馬車が停まっている。


ややあって。


高級馬車から、一目で貴族とわかる身分の女性が下りてくる。


その女性は、女騎士の隣に並んだ。


挨拶をはじめる。


「本日は、スタンピードの首領討伐作戦にお集まりいただき、ありがとうございます。私はアトラミル領の領主、フリーナ・フォン・アトラミルです」


エメラルドのような緑色の髪をたずさえた女性。


ルビー色の静謐な瞳。


白いドレスに、羽織ったケープ。


上等な教育を受けてきたような、貴族たる品格を感じさせるたたずまいである。


あれが……アトラミル領の領主。


雑談をしていた者たちも静まり返った。


フリーナが続けた。


「さっそくですが、討伐作戦の概要を確認させていただきます。まず作戦の目標は、アトラミルカ西、南西、南、南東にいまだ存在する、スタンピード残党の掃討、および、首領ボスの討伐です」


スタンピードは南から襲来したが……


話から察するに、残党は西や南西、あるいは東にも散らばったらしい。


アリスティは伝えられた情報を丁寧にインプットしていく。


フリーナが演説する。


「今回のスタンピードは、この首領によって引き起こされたものと推定しています。兵士や冒険者の皆様のご協力のおかげで、スタンピードは防ぐことができましたが、首領を討伐しない限り、再発の危険があります」


ゆえに、首領を討たなければならないのだと。


フリーナはそう語った。


さらに続ける。


「今から、ここにいる我が騎士クレディアの指示で、全員を班に分けます。ではクレディア、よろしくお願いします」


クレディアと呼ばれた女騎士が、一歩、前に出た。


「ああ。聞いた通り、これから班分けを行う。まず戦士諸君は、十の列に並んでいただきたい」


指示通り、戦士たちが列をなしはじめた。

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