第3章
第3章37話:魔物の襲来
―――第3章―――
秋が過ぎて。
冬が過ぎた。
雪解けの春。
アリスティは着実に成果を積み上げ……
Cランクへと昇級していた。
これぐらいのランクになってくると、実入りの良い依頼も受けやすくなる。
アリスティは積極的に強い敵と渡り合い……
資金を貯めていった。
全ては、母を救うためである。
しかし。
船を借りるお金。
魔力病を治療してもらうお金。
この二つには、多額の費用が必要であり。
アリスティは、もっとドカンと稼げる仕事を求めていた。
そんなある日だった。
冒険者ギルド。
アリスティが、依頼掲示板を眺めていると……
ふいに入り口の扉がこじあけられ、男が飛び込んできた。
「大変だ!」
男は叫んだ。
「スタンピードだ!! スタンピードが起きた!」
その場にいた全員の顔色が変わる。
スタンピード。
たしか、魔物の大軍が来襲してくる現象をさす言葉だ。
そのとき、テーブルの椅子に座っていた大柄の男が立ち上がった。
「スタンピードだと?」
ザノハである。
ヒゲモジャの顔。
熊のような体格と筋肉。
テーブル脇に置いた
ザノハはCランク冒険者であり……
このギルドにおける、冒険者たちのまとめ役のような男である。
「どういうことだ? 詳しく話せ!」
ザノハが言うと、男は肩で息をしながら、話し始めた。
「魔物の大軍が、南の方角から、すぐそこまで迫っているんだ! とんでもない数だ! 早く対応しないと、この都市も魔物に飲まれるぞ!」
アリスティは険しい顔をした。
ギルド内がざわめきに包まれる。
「スタンピードって、まじかよ」
「どうなっちゃうの?」
「逃げたほうがいいかな?」
「いや、でも、逃げたら都市が滅ぶぞ」
と、冒険者たちが口々に声を漏らす。
ザノハが、鼻を鳴らしてから、確認するように尋ねる。
「ウソじゃねえんだな?」
その問いに、男は必死の形相で訴える。
「こんなウソつくわけねえだろ! 本当だ! スタンピードが確かに起きてる!」
「そうか」
ザノハは了解したように言ってから、カウンターに向かった。
「おい受付嬢ども? 聞いたか? スタンピードだ。オレはこれから、スタンピードの魔物どもの壊滅に向かう。そのあいだ、お前らギルドは、魔物討伐の報酬額を1.5倍に引き上げとけ」
「い、1.5倍!?」
受付嬢が悲鳴まじりの声をあげた。
ザノハは怒鳴るように告げた。
「当然だろうが! こっちは命がけなんだよ! スタンピードを放置したら、この都市はどうなると思ってる? 割に合わない仕事なら、オレはおりるぜ?」
そう言ってから、ザノハはニッと笑った。
がめつい男である。
しかし、冒険者らしいとも言える。
スタンピードが本当だとするなら、討伐にあたっては相当な危険が想定される。
だから、できるだけ報酬額を吊り上げておこうというのが、ザノハの狙いだろう。
「理屈はわかりますが、し、しかし、1.5倍はさすがに……」
と、受付嬢が渋った。
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