第2章36話:解散

冒険者ギルドを出たとき、日が傾き始めていた。


夕焼けのオレンジ色が街全体を照らしている。


「日も暮れてきたし、今日はこれで解散だね」


レベッカが言った。


ミレーゼがうなずく。


「驚きも多かったが、有意義な一日だった。是非またパーティーを組みたいな」


「そうだね。……アリスティ」


「はい」


「アリスティは冒険者ギルドに入ったばかりで、わからないこともあるだろうけど、困ったことがあったらいつでも聞いてね。あたしたちはもう、友達なんだから」


「友達……」


「一緒に依頼をこなしたならば戦友だ。死地を乗り越えた仲間は、得難い信頼で結ばれるものだからな」


ミレーゼが微笑んで言ってくる。


レベッカは、苦笑して告げた。


「まあ死地ってほど絶望的ではなかったけどね。誰かさんがゴーレムを瞬殺してくれたおかげで」


「あはは……」


乾いた笑いを浮かべるしかない。


それを見てレベッカさんたちは笑った。


「それじゃ、またね」


「さらばだ」


「はい。また」


二人とそこで別れる。


アリスティは、友人が二人もできたことを喜ばしく思いながら、帰路に着く。






帰り道。


アリスティは、雑貨屋をおとずれる。


ギルドで得た資金を使って、アイテムバッグを購入した。


一番容量の小さいアイテムバッグではあるが、かなり高額だった。


有り金の多くが消えてしまう。


でも、必要経費だと割り切った。


アイテムバッグがあるだけで、持ち帰れる素材が増える。


長い目でみれば、アイテムバッグを買っておいたほうが得ということになるだろう。


さらにアリスティは、市場いちばでお酒を買うことにした。


リンゴ酒である。


アリスティは先日、20歳を迎えている。


なので、お酒は解禁である。


アリスティは、酒瓶をアイテムバッグに収納して、宿屋に帰る。


宿屋の部屋。


アリスティは、ベッドの淵に座って、お酒を飲み始めた。


「……!」


なるほど。


これがお酒。


これがリンゴ酒か。


甘酸っぱくて、美味しい。


酒は苦手な人も多いと聞くけど、このお酒は飲みやすいね。


アリスティはぐびぐび飲む。


おつまみには燻製肉くんせいにくを食べる。


束の間、優雅な気分に浸る。


そうして、酒瓶を飲み干すころには。


すっかり酔いが回っていた。


ベッドに寝転がる。


疲れが溜まっており、酔いもあったので。


すぐに、睡魔がおとずれた。


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