第2章35話:ゴーレムの素材

アリスティは地面に着地し、一つ深呼吸をした。


周囲にはゴーレムが倒れた風圧で砂塵さじんが舞っていた。


砕けたゴーレムの身体が瓦礫がれきのごとく散乱していた。


「終わりました。……あれ?」


レベッカさんとミレーゼさんのほうに声をかけたが、二人は唖然とした顔で固まっていた。


もしかして……やりすぎた?


「あ、あなた……いったい何者なの」


レベッカが聞いてくる。


「え、えっと……」


アリスティは言いよどんだ。


ミレーゼはゴーレムの残骸に視線を走らせて、困惑したようにつぶやく。


「強いとは思っていたが……さすがにこれは驚いたな」


アリスティは慌てて取りつくろった。


「わ、私は普通の冒険者です!」


「それはないわね」


「ああ。ない」


二人から即座に否定され、アリスティは落ち込んだ。


ミレーゼは尋ねた。


「まあアリスティが何者かという問いについてはさておき、このゴーレムたちをどう持ち帰るつもりだ?」


レベッカは答える。


「アイテムバッグに、これだけのサイズのゴーレムを4体も入れるのは無理ね。一度戻って、運搬屋を10人ぐらい雇うことにしましょう――――」






というわけで。


冒険者ギルドへと帰還したあと、運搬屋を雇う。


ゴーレムの残骸を運んでもらうことにした。


数時間後。


ギルドの裏庭に、ゴーレムが運ばれてくる。


買取のため、受付嬢の立会たちあいで、ゴーレムの検品をおこなってもらった。


ついでにレッドウルフもアイテムバッグから取り出して、検品。


近くにいた冒険者たちがざわめきだす。


「すげえ。あれ見ろよ」


「ゴーレムよね」


「レベッカ、ミレーゼ! これあんたたちが倒したの!?」


女性冒険者が二人に尋ねていた。


レベッカが肩をすくめ、ミレーゼが首を横に振った。


それから二人してアリスティのほうを見やってくる。


「レッドウルフは別として、ゴーレム4体に関しては彼女が一人でやったわ」


「え!? あのが一人で!? というか4体も!?」


どうやらゴーレムを4体も倒したことは、このギルドでは驚きに値することらしい。


話を聞いていた冒険者たちのざわめきが一段と大きくなる。


アリスティはかなり注目を浴びてしまっていることに気づき、縮こまっていた。


そこで受付嬢ノアが話しかけてくる。


「あの……それで報酬についてですが……」


彼女もまた驚いたような引いたような顔をしていた。


ミレーゼが答える。


「聞いていた通りだ。レッドウルフは私たち二人も倒したが、ゴーレムはアリスティ一人でやった。故にゴーレムの買取については、私たちとは別で頼む」


「わかりました。ではそのように処理いたしますね」


ノアが了解して、冒険者ギルドに引っ込んでいく。


しばらくすると、両手に金銭袋を抱えて戻ってきた。


アリスティに話しかけてくる。


「大アオドランに続き、大変なご活躍ですね」


「きょ、恐縮です……」


「ギルドとしてはたくさん素材が手に入るので有難いことです。こちらが今回の報酬です」


受付嬢から報酬を手渡される。


ずっしりと重みのある金銭袋。


大アオドランのときよりも、遥かに多い金額が入っていることがうかがえた。


その金銭袋を受け取ったあと、アリスティたち三人は冒険者ギルドをあとにした。





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