第2章34話:ゴーレム

それから荒野を歩いて、レッドウルフを討伐していく。


アリスティは単騎で。


レベッカとミレーゼは連携で。


レベッカとミレーゼの連携攻撃は、見事だった。


前衛のレベッカが果敢に切り込みつつ、ミレーゼが後方から弓で援護する。


それらの連携は一朝一夕のものではなく、二人の長い付き合いがうかがえる戦いぶりだ。


「よし……これで依頼は達成だな」


目標討伐数に達したので、ミレーゼさんがつぶやいた。


「じゃあ帰還して―――……」


ふとレベッカさんの声が止まった。


彼女は私たちの背後を、驚いたような顔で見上げている。


背後には確か岩場があったはずだが―――


「……!!」


「ゴーレム、だと!?」


振り向くと、そこには巨岩の後ろから躍り出てくるゴーレムの姿があった。


一体、二体……ぞろぞろと現れ、計4体ものゴーレムが立ち並んだ。


「ちょ、ちょっと、この数はまずいって!!」


と、レベッカが叫んだ。


「逃げるぞ!」


二人が即座に退却を決めて走り出す。


ゴーレムたちが逃がすまいとドシドシと駆け出してきた。


鈍重なように見えるが意外と素早いようだ。


しかも身体が大きいだけあって一歩の歩幅が広い。


逃げるとなると苦労するだろう。


「おい、アリスティ! 早く来い!」


ミレーゼが言ってくる。


しかし、アリスティはゴーレムを見据えたまま、答える。


「倒します!」


「なにっ!?」


アリスティは、迫りくるゴーレムに対して、ファイティングポーズを取った。


レベッカは必死に訴えてくる。


「無理よ! ミスリルの武器でもないかぎりゴーレムの身体は砕けないわ!」


ミスリル……か。


名前は聞いたことはある。


硬い武器なのは知っているが、それがどの程度の硬度なのか、想像はつかない。


自分の拳が、ミスリルより強いことを祈るしかない。


「ゴォォォォォッ!!」


ゴーレムの拳が炸裂する。


大気を震わす大岩おおいわの腕が、轟風をまとって接近してくる。


アリスティはそれを避けることなく――――


素手で受け止めた。


「なっ!!? ゴーレムの攻撃を受け止めただと!?」


ミレーゼの驚愕の声が響く。


そのままアリスティは、ゴーレムのふところにもぐりこんで胴体を殴り飛ばす。


拳の一撃でゴーレムの胸部きょうぶが粉砕した。


「ええええ!?」


今度はレベッカさんの驚愕する声が響いた。


胸部きょうぶを砕かれたゴーレムが地面に倒れ伏せる。


アリスティは転倒したゴーレムのうえに着地して、そのまま跳躍。


「ふっ!」


2体目、3体目を殴り飛ばして破壊する。


空中で落下している途中、最後の1体が接近してきた。


殴りかかってきたが、その拳を逆に殴り返し、ゴーレムの拳骨げんこつを粉砕。


さらにアリスティは着地後、ゴーレムの胴体にキックを食らわせて、その巨体を崩壊させた。


かくして、討伐完了である。

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