第2章32話:荒野

街を出て、北の街道を歩く。


この街道を2時間ほど歩いた先に、目的地であるサンドナ荒野があるらしい。


「それにしてもアリスティさんって、初日でDランクなんでしょ? ほんとすごいよね」


レベッカが言ってきた。


「す、すごくないですよ」


「いや、すごいわよ。歴代最短記録なんじゃないかしら?」


と、レベッカが再度賞賛してきて、ミレーゼが同調する。


「おそらくそうだろう。冒険者登録をして、初日で大アオドラン級の魔物を倒したという話は聞いたことがない」


「ね。実力的にはCランク以上もあるんじゃないかしら」


冒険が始まってすぐに褒めちぎられて、私は恥ずかしさで困惑してしまう。


とにかく話題をそらそう。


「お、お二人は冒険者をやってる。長い? です、かな」


「うーん。あたしは2年ぐらいかな。ミレーゼはもっと長かったよね」


「私は今年で7年だな」


「7年って凄いです。ベテランです、じゃないですか」


「7年もやって、まだDランクだ。初日で追いついた君には負けるさ」


「私は駆け出し。まだまだ、です……ミレーゼさんは、冒険者業、好きなのです?」


「そうだな。最初は生計を立てるためにしょうがなく始めたが……すぐにこの仕事の虜になった」


ミレーゼはふと空を見上げて、語る。


「冒険はいい。魔物を倒せば人々に感謝され、美味しい肉も食べられる。知らない知識や、見たこともない景色にも出会える。私にとっては天職だな」


「強くなればできることも増えるしね。命がけであることを除けば、楽しい仕事であることは同意するわよ」


と、レベッカも同調する。


二人は冒険者という仕事が、純粋に好きなようだ。







しばらく歩いて【サンドナ荒野】に辿り着く。


荒野……というだけあって植物は少ない。


むきだしの土や大地がそこかしこに見受けられる。


空気がカラッと乾燥していて、心なしか、さっきより気温が高い気がする。


ほんの数時間歩いただけで、こんなに環境が変わるものだろうか……


そう思っていると、レベッカさんが説明してきた。


「ここは太陽石たいようせき火魔石ひませきが多く産出されるフィールドなのよ。だから気温が上がっていて、大気も乾燥してる。動物の種類や植生とかもだいぶ違ってるわけね」


「へぇ……なるほど」


周辺の草木を眺めてみる。


レベッカさんの言った通り、これまで歩いてきた草原とは、植物の種類が異なることがわかる。

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