第2章29話:依頼
アリスティはさっそく依頼を受けようと、掲示板に向かう。
掲示板には、依頼書が多数貼り付けられている。
だが……
(やはり、文字が読めませんね)
話し言葉は、最低限、覚えたつもりだ。
しかし読み書きはできない。
ベルニーでさえ、読み書きには不自由しているぐらいだ。
アリスティにできるはずがなかった。
(たしか、依頼書の内容を読み上げてくれるサービスがあると、おっしゃっていましたね)
ノアの言葉を思い出す。
アリスティは、ノアに頼ることにした。
カウンターからやってきたノアが、依頼書を一つ一つ読み上げてくれる。
アリスティの冒険者ランクはEなので、受けられる依頼はごくわずか。
ホーンラビットの討伐。
ウルフの討伐。
薬草の採取。
解毒草の採取。
このいずれかである。
採取系より討伐系のほうが、自分には向いていると思った。
なので、ホーンラビットとウルフの討伐依頼を、受注することにした。
(では、さっそく討伐に向かいましょうか)
受注が済んだので、冒険者ギルドをあとにする。
東門から出て、南東へと歩き出す。
南東の森にホーンラビットが生息しており、
さらに、その奥にはウルフも生息しているとのことらしいからだ。
街道から外れ、草の上を歩く。
やがて森にさしかかった。
すぐにホーンラビットが現れたので、討伐する。
討伐証明として【ホーンラビットの魔石】をとって、バッグに放り込む。
さらに奥へ進むとウルフが現れたので、討伐する。
討伐証明として【ウルフの魔石】をとって、バッグに放り込む。
ぐんぐん奥へ進む。
2時間ほどで、依頼ぶんのホーンラビット、ウルフを討伐することができた。
(戻りましょうか)
と、思った。
そのときだった。
ドタ、ドタッと、大きな何かの足音が、茂みから聞こえてきた。
視線を向けると、奥の茂みから、大きな青色の魔物が出現する。
トカゲ状の魔物である。
全長は3メートルぐらい。
こいつは……
(たしか、アオドラン……?)
アオドラン。
受付嬢が、依頼書を読み上げたときに、名前を口にしていたのを覚えている。
青色のトカゲ型のモンスターであると。
Dランク相当であり、駆け出しの冒険者が相手にできる魔物ではないと。
(別に、Dランク依頼を受けられなくたって、倒しちゃダメってわけじゃないですよね)
アリスティはEランク。
Dランクであるアオドランの討伐依頼は受注できない。
しかし、受注できないからといって、討伐してはいけないわけではないだろう。
倒せるなら倒してもいいし、倒した素材は売却できる。
……アオドラン。
討伐してやろう。
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