第1章8話:海の対策

ある日の昼。


アリスティは一人、砂浜に立って考える。


「海で戦う……か」


海の上で戦う。


あるいは、海中で戦う。


どちらにも対応できるようにしておくことが大事だろう。


ただ、口で言うほど簡単ではない。


人は地上で活動する生物だ。


どうしても海ではパフォーマンスが落ちる。


だが。


「とにかく、トレーニングあるのみ……ですね」


海での不利は、訓練次第で補えると思うことにした。


なにしろ時間は無限にある。


まずは、ひたすら修行をしてみよう。






――――最初の半年。


アリスティは、とにかく泳ぎまくって。


水中で動き回れる身体能力を身につけた。


水中を泳ぎまわる能力を身につけておくことは、アルヴィケルに限らず、海の魔物と戦うにおいては重要となる。


いずれ遠洋に出るなら必須となる技術だろう。





――――次に1年。


高速で泳ぎ回る泳力。


および、水中でも高威力の攻撃を放つ戦闘能力を身につける。


結果。


近くの海を泳いでいた大物、グレートシャチというシャチを水中で殴り殺すことに成功した。


順調な成長ではあるが……


この程度ではアルヴィケルを撃滅することは難しいだろう。


ちなみに、水中の攻撃力は、地上の訓練でも鍛えられるとわかった。


ゆえに海に入っていないときは、訓練場にて鍛錬をひたすらおこなう。





――――そして、また半年。15歳。


水の上を蹴りながら、沈まず移動する技術を習得する。


アリスティ本人は気づいていないが、尋常ならざる曲芸である。


とはいえ、これは魔力の消費が激しい。


あまり使えない。


どうしても使わないといけないときに使うものとして、取っておこう。


――――そして16歳、17歳、18歳となる。


長年の修行の末。


水中だろうと陸上だろうと、もはや、アリスティの拳で殴り壊せないものは無くなっていた。






実はこのとき、アリスティの攻撃力は、竜にすらダメージを与えられる領域に達していたが……


その凄まじい能力が世に知れ渡るのは、ずっと先の話である。






さて、アリスティは19歳になる。


この年……


なんと母が、病に倒れた。


病気は、非常にわかりやすい特徴を持っていた。


身体に、紫色のあざが次々と浮かんでいたのだ。


【魔力病】だ……とユーナが言った。


人間は、体内の魔力のコントロールが上手くできなくなる状態が、稀にあるらしい。


それが魔力病である。

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