第1章6話:花

11歳になったある日。


アリスティはユーナとともに、魔物狩りに出かけた。


訓練場から、坂道を登れば、山に入ることができる。


この山を、ユーナは【ミユテ山】と呼んでいる。


ミユテ山には魔物が存在する。


――――アリスティは、生まれてはじめて魔物と戦う。


しかし彼女は、素晴らしい働きを見せる。


「フッ!!」


コカトリヌスというニワトリ型の魔物を、アリスティが蹴り殺す。


この魔物は、そこそこ耐久があり、空を飛ぶので厄介なのだが……


一撃である。


空に逃げられる前に、即座に近づいて、一発。


たったそれだけでコカトリヌスは絶命する。


「あはは……さすがアリスティ。本当にすごいわね」


ユーナは賞賛した。


「もう、あたしよりも強いでしょうね。これぐらい戦えるなら、あたしがいなくても平気かな?」


「いえ……まだまだわからないことも多いですし、もっと教えてほしいです」


「そっか。まあ、あたしが教えられることは、全部教えてあげるわよ」


「はい!」


アリスティが元気よく返事をする。






しばらく魔物を退治しながら、山のゆるやかな坂道を登っていく。


草木が生い茂っていて動きにくい場所も多いのだが……


途中から獣道のようなものがあらわれ、すんなりと登れるようになった。


やがて、獣道を抜けると……


海が見張らせる、小さな山の広場があらわれた。


「わぁ……」


この高さから海を眺めたことはない。


アリスティは、感動する。


「ここは【ミユテの踊り場】……と、あたしたちは名付けているわ」


「踊り場?」


聞きなれない単語だった。


ユーナは説明する。


「踊り場というのは、階段と階段の途中にある広場のことよ」


「へえ」


「この広場は、ちょうど、山の途中にあるでしょ? だから、踊り場と名付けたの」


「なるほど!」


と、アリスティは納得する。


「ん……?」


そのときアリスティは、視界の端に、花が群生しているのを発見した。


オレンジ色の、美しい花である。


「綺麗……」


アリスティは近寄って、じっと眺める。


ユーナが言った。


「それは、ミズヒイロよ」


「ミズヒイロ?」


「ええ」


ユーナも、花に近づき、それを2つ摘んだ。


1つを、アリスティに渡す。


「……?」


何故渡されたのかわからなくて、アリスティは首をかしげた。


「この花には、花言葉があるの」


ユーナが説明した。


「ミズヒイロの花言葉は、絆、永遠の仲、大事なつながり……家族や親友などに送る花なのよ」


アリスティは目を見開く。


ユーナに、花を渡された意味を理解する。


絆。


永遠の仲。


大事なつながり。


アリスティは、ミズヒイロの花言葉をかみしながら、手に持った花を眺める。


「あ、それなら」


と、アリスティは、花をさらに1つ摘む。


「お母さんにも渡しましょう!」


「……ええ。そうね」


アリスティの言葉に、ユーナは微笑んだ。

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