第1章4話:パワーリング

その日から、ユーナにはトレーニング方法と戦闘技術を教わった。


まずトレーニング方法について、ユーナはこう語った。


「身体強化魔法を使っている状態で、トレーニングをしても、筋肉は太くならない」


「……? そうなんですか?」


「ええ、そうよ。だから、鍛えまくってもゴリラマッチョにはならないってこと」


「ごりらまちょにはならない?」


「そう。ごりらまちょにはならないの」


ユーナは笑う。


そして、ユーナは、ある道具を差し出してきた。


「この指輪を、あなたにプレゼントするわ」


「指輪……」


「ただの指輪じゃないわよ。これは【パワーリング】と言ってね、身体にかかる負荷を自在に調整できる指輪なの」


「ふーん?」


「トレーニングってね、同じ負荷でやってても強くなれないのよ。だから、現在の負荷に慣れてきたら、どんどん負荷を高めていかなくちゃいかない。この指輪は、それを手助けしてくれる指輪なのよ」


「なるほど。そうなんですか」


アリスティは、なんとなく思う。


この指輪は、島の中で創られたものではない。


おそらく、かつてユーナたちが、島の外で手に入れたものなのだろうと。


「使い方を説明するわ。よく聞いてね―――――」


ユーナが、指輪の説明をおこなう。


だいたい以下のようなものだ。


(1)指輪は、指にはめた状態で使用できる。


(2)頭の中に「パワーレベル+数字」を念じることによって、数字に記された負荷が全身にかかる。


(3)たとえば「パワーレベル5」と念じると、レベル5の負荷が全身にかかる。


(4)レベルは99まで存在する。


ユーナは言う。


「つまり、99段階で、負荷を調整できるということ。私はレベル32が限界よ」


「なるほど」


「アリスティは、もっと上の負荷でもいいかもしれないけど……まずは、レベル1から順番に、適切な負荷を探っていくのがいいと思うわ。いきなり高負荷に設定すると、身体を壊す危険もあるからね」


「わかりました。じゃあ、レベル1からやってみます」


「ええ。そうしてちょうだい」


こうして、アリスティは、指輪によって負荷を調節しながら、トレーニングを開始することになった。

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