フォルダール連邦共和国_ federal republic of Folldal



 ——この文献には付箋が挟まれ「再調査の必要あり」と記されている。


 フリンフロンの南に位置する国でリードランの中でも一年を通して暖かい気候の国で、芸術を愛でる国柄であることが有名である。今ではフォルダールの優男という言葉が産まれるほど、色恋沙汰を好む男性の印象が強い国であるが、かつてはフォルダール剣術の代表流派「フロス・デュエラトールム」を産み出した剣術士フィオレ・リベリを輩出した国としても有名だ。


 フォルダールには体系化されてはいないが、現在、魔導と魔術を融合した術が生まれつつある。これは、言の音を紡ぎながら絵画を描いたり、工芸品(アーティファクト)を創る技法で、言の音で練られた生体エネルギーを魔術の術式で拡張し、紙に宿すというものだ。


 術式は絵画などの図案に隠されるため、絵画などを購入した所有者に間接的に影響をもたらすし、その影響下にあると所有者が気がつくことが難しい。ただ、これは術者も意識をして行なっていないことが多く、例えば何か希望をもたらす様な唄を口ずさみながら描かれた絵画などの所有者は、希望に満ち溢れる体験をするなどといったものだ。日本で言うところの、付喪神に近い。


 不幸をもたらす絵画や髪の伸びる人形、そういったものもこれに当たる。フォルダール出身の双剣の剣術士ハンス・タルホの持つ双剣のグリップには、彼の妻が紡いだ厚手の手芸布をあててあり、この布には体を軽くする術式が編み込まれている。そのため彼は、類まれな身体能力に合わせて人の背を軽々と跳躍する技を組み合わせフロス・デュエラトールム最強の剣士の名を想いのままにしている。


 かつて古アークレイリの一部族が南に移住して建国されたというフォルダール国の民は純血は髪の色が先祖と同じく赤系が多いが、数多くの移民を受け入れてきた背景もあり、黄土色やブロンドも多く見かける。南の国境の先は大ノースランド山脈が横たわり、かつてそこを超えて南に行った者は居ないとされている。遥か南は妖精の地や悪魔の地と語られることが多い。

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