第10話
「ここが、STOP本拠地か」
アクルが指を指す。
アクルが指を指した先にポツンと立っている7角柱の建物。高さは8M、横幅は12Mほどで窓はなく外と通じる道は4Mほどある門1つだけ。
この建物がアメリカ1の巨大組織の本拠地というのは、にわかには信じがたい。
「研究員や戦闘員が全員夜逃げしてなきゃそうニャ」
「そりゃいくら何でもねえだろーよ。いくら一回も刺客が来なかったからって」
アクルの一番の懸念点はそこだった。一度も刺客が来なかったこと。それは不自然以外の何物でもなかった。
1ヶ月以上刺客が来なかったことは一度もない。以前から雑兵でもなんでも何かしら1人は来ていた。
――あまりにも不自然。
「もしかしたら、中に入ったらいきなりヘッドショットとかあるかもしれない。気を付けるか」
「そんなことにならないために、あの作戦使うニャ。気にする必要ないニャ」
「ドアがああいうタイプでよかった。地下に埋まっていたら、作戦出来ないからな。今でも相当ギャンブルな作戦だけど」
「じゃあ、行くかニャ。『ぶっ飛ばし強行突破作戦』」
「シートベルト閉めろよ」
アクルはこのまま直進すれば門の前に行けることを確認しながら、エルハに注意をした。
エルハがシートベルトをつけたことを確認すると、『最高速度開放』と書かれたガラスケースを開け、レバーを引く。
「歯、くいしばれ!」
そしてアクルは、ただ思いっきり、アクセルを踏んだ――
一気に時速200㎞以上のスピードが出るRAN号。
そして封印を解いた後のRAN号は、10Mもあれば、最高速度である1842㎞を出すことができる。
瞬間的に門へ突撃するRAN号。
原子爆弾が直撃でもしない限り一撃での完全破壊は不可能な合金でできている、7t以上の重量の車が約600㎞のスピードで、STOP本拠地の門に突撃した。
隕石が直撃したようにはじけ飛ぶSTOP本拠地の門。
作戦名『ぶっ飛ばし強行突破作戦』
何の捻りもない作戦名である。
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RAN号のウインドガラスから、洞窟のような暗闇が見える。
「よっし! 侵入成功!」
「よかったニャ。ここで突破できなきゃ全部終わっちゃうとこだったニャ」
「やっぱ奥の手として残しておいてよかったな。ずっと最高速度開放はしなかったから作戦通じた」
「そうニャねー。知られていれば、ガッチガチに対策されてたニャ」
「じゃあそろそろ行くか」
2人はRAN号から降りて、瓦礫が飛び散っている廊下に出る。
「ここからはアクルを盾に一緒に進むニャ。どうせ一撃じゃアクル死なないし」
「一応俺にも痛覚はあること以外には完璧な作戦だな」
「アクルとは皮も肉も繋がってないニャ。痛くもかゆくもないニャね」
「俺には皮も肉もないからな」
「これが本当の皮肉ニャ?」
「あはは、笑えるジョークだな。生きて返ったら持ちネタにするが」
アクルはエルハの前を歩きながら高笑いをする。
エルハはアクルを盾にしながらニャハハと哄笑する。
実に平和な空間だ。喋っていることがあまりにも酷いことを除けばだが。
「実際問題相性あるよな。俺がカマルとフィリップに会ったら地獄だし」
「まあ何とかなるニャ。別に神様相手にするわけじゃないんだから何とかなるニャ」
「なんとかもなる気がしないんだが・・・・・・。それに――」
そこまでだった。2人の愉快な作戦会議はそこで途切れた。
なぜならアクルの足場が瞬間的に消えたからだ。
パカ、と床が開いた。
「! アクル!」
「来るんじゃねえ!」
言葉を残してアクルは暗闇の中に落ちた。
アクルの体が完全に穴に落ちたところで穴は閉まりどちらにしろ追いかけることはできなくなったが。
「・・・・・・まあアクルだったらなんとかなるだろうし自分のこと優先するニャ。ここで死んだらそれまでの奴ってだけのことだし」
残酷とも信頼しているとも考えられることを言いながらエルハは開いた床を飛び越え、道を急ぐ。
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