第11話

 このまま落下死で死んでしまえば彼の描写はもういらないという結論となるがしかし彼は生き残った。

 彼はこの程度では死なない。20m程落ちたところでアクルが死ぬことはない。

 せいぜい普通に立ち上がれる程度の怪我しかしない。

「痛ぇな。動けるけど。」

立ち上がり周りを見渡す。

家具が散乱していて清潔とは言えない部屋。埃が舞いとても息苦しい。

「いくらなんでも研究室じゃないよな・・・・・・。いやあり得るか。研究者には平安名の多いらしいし。じゃあこの部屋には何が――」

 アクルはとりあえず一歩足を踏み出す。

 カチ。

「ん? なんだこの感触――」


 ボカン!


 まるでアニメのようなファンシーな音でその爆弾は爆発した。

 そして・・・・・・・・・アクルは5mほど吹き飛んだ。

「くそ。爆弾か・・・・・・」

 アクルは立ち上がり、また一歩前に進む。

 カチ。

「っ!」


 ボカン!


先ほどと寸分たがわない爆発音が空間に響く。

 そしてアクルはまた吹き飛ばされるがその着地点でもまた

 カチ

 そして――


 ボカン!


アクルはまた吹き飛ばされた。そして着地した地点でまた爆発――。

――ちっ。面倒臭い――だが好都合。こんなことばかりしていても俺にダメージは入らない。

――爆弾には在庫がある。それが無くなるのを待てばいい。

 そのままアクルは爆弾を踏み――


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ロボットはまだ気づいていないようじゃのう。わしの爆弾の真の性能を」

 真っ暗な部屋でソフィアは呟く。


「わしが開発した爆弾『オーバーピーク』。サイボーグ用に改造した爆弾じゃ。一撃一撃の火力はそれなりじゃが、一回一回の爆発に毒が含まれておる。散布された毒は熱によって変化せず、火薬によって変化せず、少量でもそれなりに効き、無味無色で、コストパフォーマンスが割に合うと欲張りに欲張った結果30分の潜伏期間が必要になってしまったが。それも爆発している時間で十分時間稼ぎ可能。われながら最高の出来じゃのう」


 そしてソフィアは後ろを向いて言う。

「のう。オーラム」

「・・・・・・・・・」


 特に特徴のない男がそこにいた。

 外見的特徴は一つ足りとてない。人種も、目の色も、毛の色も何一つとして特徴のない青年。


「ほれほれ。お前の仲間さんがこのままでは死んでしまうぞ。助けてやろうとは思わんのか?」

「・・・・・・・・・」

「ふん。面白くない奴め。開発者も何を考えているんじゃか。ユーモアのない発明なぞゴミに等しいじゃろうて。・・・・・・あれでも使うか」


 そういうとソフィアは杖を振りかざし、オーラムに向けた。


「『マジカルノーツB3』『マジカルノーツF6』『マジカルノーツQ4』化合『マジカルノーツBF2Q5」


 虹色の噴煙がはじけるように杖から飛び出した。煙はオーラムを包み込む。


「ふう。やはり間近で人に撃つ魔法は良いもんじゃ。こいつはロクに反応しなくて盛り上がらないが。今回の報酬で適当に屈強な男でも買うかの。脳が狂って陸に上がった魚みたいな踊り方をする屈強な男を見るのは実に愉快じゃ」


 ケラケラとソフィアは笑った。

 それと同時にオーラムの目が光った。


「『対象排除』」

「? なんじゃ――」


 バン!

グチャ

 それだけだった。ソフィアの脳が吹っ飛ばされて、ソフィア体のパーツが部屋に飛び散るために出た音は。


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