第9話
STOP本部34番生活フロア。
数人用のソファーが複数と、ドリンクの自販機があるぐらいの普通の休憩所といったところだ。しいて特徴を言うなら、窓が無いことぐらいか。
6人の人影が見える。
「そもそも勝手だわね。あたしたちをこんな追い返ししたり、呼び戻したりして」
筋肉で包まれた身体に女性物の黄色いビキニを纏っている男が文句を言う。
「それでも報酬がいいから何度も来ているのでしょう。どうせ帰る意味もないのですから、カマルさんの言葉に意味はないです」
文句に答えたのは真っ黒なジャージを着た、髪の長い小柄な美青年。
大きくはない彼の身体には釣り合わない、巨大で武骨な七角形の盾を丁寧に磨いている。
「まあ、わしも報酬の金を狙いここまで来たからな。文句言うわけには言わないが・・・・・・、もう少し何とかしてほしいとこではあるの。毎回こうやって来るのは面倒じゃ」
葉巻を吸いながら呟いているのは、身長の低いショートヘアの少女。
もっとも少女なのは顔だけで、実年齢は二十歳を超えているだろうことは、蛇のタトゥーが彫られている豊満な胸を見ればわかりきっているが。
残り3人の男は黙って、ビキニ男のマッサージをしている。その目は虚ろで、どこまでも絶望的だ。
「まあ、あたしはここに来ればいい子が手に入るから来てるんだけどね。後タテちゃんーあたしに全てを委ねてみない?」
「丁重に断らせていただきます。僕に男色趣味はありません。その誘いはもうかれこれ7回目です。その勧誘に意味はありません」
「・・・・・・別に強制的にやっちゃってもいいのよ」
「あなたの人骸呪術は僕に意味はありません。忍者になるためには常識外でも考えられない精神修行があるんですよ」
2人が睨み合う。そこに割り込む杖。
「まあまあ、雇われの身どうしで争うことはやめるのじゃ」
2人が黙り、視線を外すと少女は満足そうな顔をしながら煙を吹かす。
少年が黙りながら、ジャージのポケットから蜘蛛の死骸を少女に投げつけた。
「ギャー!」
少女は叫びながら蜘蛛を振り落とそうとする。
その隙を突き、少年は一瞬で間を詰めて、正拳突きを放つ。
少女はなんとか杖を駆使し。
「ぐっ、何する! こんないたいけな少女に!」
「・・・・・・あなたは何でここに雇われたんですか?」
少年が本当に疑問そうに質問する。
「あなたは身の動きや僕の攻撃への対応から考えて、おそらく銃弾を避けることはできるぐらいはスピードや判断力こそ高いようですが、腕力、膂力が足りません。始末対象のミュータント計画脱走個体より早いわけでもないですしね。また、精神力が強いとは思えない。そんなあなたを雇っても意味がありません。なのに、なぜ雇ってもらえたんですか?」
そう聞くと少女は不敵な笑みを浮かべながら言う。
「それはひとえにわしの――技術力が高いからじゃよ。もしも本気のわしじゃったら誰も正面から勝つことはない。今回の報酬はわしの物じゃ」
「いやいや、もうダックさんが狩ったでしょ。あの人過信と油断するところを除けば、基本的に無敵なんだから。その考えに意味は――」
ピピピ、各自が持っていたスマホに連絡が来た。
「『ダック・ラインダース様が死亡しました。次の予想戦闘地点はSTOP本拠地。ここで迎え撃ちます』」
ビキニ男がR18でしか書けないようなことを、虚ろな目をした男たちに弄らせながら読み上げる。
一瞬の沈黙もなく、ソフィアがカラカラと高笑いする。
「やはりわしが思った通りじゃ! 狙撃手は負けた!」
杖をブンブンと回しながら大喜びするソフィア。
「マジですか。あの人負けましたか。じゃあ僕たちの番という事になりますね。まあ再確認には意味はありませんけど」
タテは面倒臭そうに溜息をつきながら、磨き終わった盾を持ってボソッと名乗る。
「刃(は)心(ごころ)殺陣(たて)。殺害動機は『そいつが意味を持って生きているから』。・・・・・・こんな名乗りに意味はありません。もともといた里の、意味のないルールです」
「・・・・・・それで、どうするのぉ? 戦う順番。あたしは後からがいいんだけど」
「いや、わしが最後じゃ! 最後が最強じゃ!」
「いやここは僕が――」
「――いや戦法的に――わよ」
「――じゃ。――しか――」
「――ですか」
「――」
「―」
「」
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