第7話
「出発ですか?」
「荷物を積んだからな」
アクルさんがこちらを見ながらいった。
「じゃあそろそろお別れニャね」
「あっ、ちょっと待ってください」
私は昨日の夜に書いた手紙を2人に渡す。
「昨日書きました! 時間があったら読んでください!」
「もちろんニャ! 時間がなくても読むニャ! アクル、レミリアが手紙書いてくれたニャ!」
「そうか、じゃ、おれたちもプレゼントしないとな」
アクルさんは車の中に入り2分ほどした後金の延べ棒を10本取り出した。
「何のつもりですか? ここにきて貧乏人を馬鹿にするんですか?」
「これ、やるよ」
「・・・・・・本気ですか?」
「本気。だって金が一番価値分かりやすいしな。後これも」
取り出されたのはナイフだった。
「お前でも扱いやすいぜ。金を換金するときに、自衛のために持っていきな」
・・・・・・どう考えてもこの人たちのプレゼントは、ずれてはいるがまあ、ありがたいし、良いだろう。
「ありがとうございます」
「じゃあ、バイバイ」
「バイバイニャー」
そして、2人は車に乗って行ってしまった。
私は二人がいなくなるのを確認した後、私は家の中に入った。
2人は理解した。もうすでに4㎞以上進んだ地点でも大きくなる銃声と、その方向で理解した。
「・・・・・・行くぞ!」
「おうニャ」
最高時速で先ほどまでいたレミリアの家に行く。
着いたとき、レミリアの家は跡形もなく、木端微塵になっていた。
「っ・・・・・・!」
そこに拡声器を通した声が響く。
『テステス、マイクのテスト中。あーあっあ、サイボーグと猫オカマ。生きているならこっちにこい。とりあえず間違いなく、黒人のガキは殺したけどお前たち殺せたかはよくわかんねえから』
その声は、殺し屋ダック・ラインダースの声だった。
2人はすぐに車に乗り込み、声の方向に車を走らせる。
すぐに声の元まで着いた。
宝石をはべらせた機関銃を片手で持ち、豹の革で造られたシャツを着て、ダックはそこに立っていた。
「俺たちがいないことぐらい、お前にはわかっていたことだよな」
車から降りたアクルは、あくまで淡々と何でもないように話す。
「いやーわかっていなかったぜ? あの黒人の少女にはかわいそうなことをした。命令では民間人は巻き込んでもいいが、狙う必要はないって言われていたしな」
一切の感情がこもっていない、全くかわいそうとも思っていない、白々しいダックの言葉。
「嘘はいらない・・・・・・。お前は腐った性根と最悪な主義を持っているが、実力だけはあるもんな・・・・・・!」
アクルの怒気のこもった声を、ダックは指で耳をかきながら、どうでもいいと言わんばかりに聞いている。
「どうなんだ。答えろよ!」
「わかんねえはずないだろ」
ダックは面倒臭そうに答える。
「俺は殺し屋だ。しかもそんじょそこらの殺し屋じゃねえ。銃の腕前は、殺し屋の中でトップ張れるよ。だけど標的以外も殺す。契約者にとって、生きている意味も殺す意味もない奴なら殺しても問題は無い。何せそんなのは契約者にとってゴミと変わらねえ」
アクルは、無表情で話を聞いている。いや、もしかしたら人間だったら血管は浮き出ているが、金属の体では、それが浮き出ないというだけの話かもしれない。
「じゃあなぜ意味のない殺しをしたのかな? 教えてくれよ」
「白人じゃないからだよ。人間なんて、白人と少しの奴隷がいれば問題ない」
「――もういい」
灼熱の殺意を持ってそれでも大声で叫びはせず、アクルはただ静かに一言で会話を終わらせた。
そしてアクルは胸のグリップに手を伸ばす。
「アクルウェポン№5――」
アクルの手が、胸のピンを握り、後は回すだけといったところでアクルの腕は止められていた。
「だめニャよ。まだだめニャ。それ使わなくても、こいつには勝てるはずニャ」
エルハの声は、アクルとは正反対なものだった。凍てつくような冷静さで、ネズミをいたぶる猫のような、――殺意だった
「・・・・・・そうだな」
アクルはグリップから手を放す。
「で、どうする? 俺様はお前らが俺と同じ、白人主義者っていうなら戦わないぜ?」
「本当なら、嘘ついてお前との戦いはスルーするつもりだったんだけどな。でもこの状況で嘘ついたら、レミリアを裏切るってことだ」
「そうニャね。裏切るわけにはいかないニャ」
「なるほど、それがお前らの答えか」
ガットが銃を構える。アクルは体を十字に広げる。
「アクルウェポン№2変装術応用。全身発光」
エルハが構えると同時に、アクルも技を使う。
アクルが技を放った直後に、ガットも引き金を構える。
「スノードロップ」
辺りが閃光に包まれた。
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