第3話

「ここがラスベガスニャか」

「よし! とりあえずギャンブルで遊ぶか!」


30分後


「金が消滅した・・・・・・」

「だから言ったニャ。アクル、運が滅茶苦茶悪いからギャンブルなんかするニャって」


アクルが溜息をする。

「お前は良いよな。1$からもう900$まで増えたじゃねえか」

「正確には1007$ニャね。お財布に入りきらないから、お財布8個持ってるニャ」

「財布持ちすぎだろ。両替して少し小さくしろよ。全部1$紙幣ってアホかお前」


そんなアクルの言葉を無視して、エルハは続ける。

「今この場において私たち二人の内、私しかお金持ってないから、今日の夜ご飯はエルハの好きなパフェに決まりニャ」

「なにも晩飯にパフェ食べなくていいだろ・・・・・・胸焼けするぞ。ていうか俺たちがここに来るのはSTOPもわかっているだろうし、そろそろSTOPが送ってきた新しい刺客が来るはず」

「こんばんは」


アクル達にいきなりカップルが話しかけてきた。男のほうは軽薄なアロハを着た、軽めのツーブロックをした、細目な東洋人。


右腕に中国語で绝对无敌とタトゥーが彫ってある。武器として使うのは、洒落た賭博場には不似合いな武骨な六尺棒だろう。


女のほうはゴスロリ風の服を着た白髪ポニーテールの東洋人。大きめなサイズのナイフを2つも持っており、体の所々が赤く染まっている。二人とも明らかに堅気の人間ではない。

「私は超と申しまして、隣の彼女は苓来と申します。あなた方を暗殺しに来ました。ほかのお客様の迷惑になってしまいますので、どうか外に出て殺させてほしいのですが」

「OK。2対2がいいか? それとも1対1?」

 超はかなり柔らかい口調で物騒なことをアクルとエルハに言い放った。

アクルは何でもない風に気楽に答える。

「1対1がいいですね」

「じゃ、おまえは俺と、女の方はエルハとやろう。嫌なら逆でもいいぜ?」

「まさか。断ったりなんてしませんよ」

 こうしてマッチングは不自然なほど自然に、瞬間的に決まった。

アクルvs超

 エルハvs苓来

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ではここでやりますか」

 ここはラスベガスのダウンタウン北側。マフィア、ギャング、違法売春、チンピラ、薬の売人などなど治安がかなり悪い地区だ。


「OK。決闘する場所としては最高の路地だな」

「では1,2,3の掛け声で決闘は始まりです」


 1、2と超がカウントダウンを始める。

 すぐにアクルは腕をガンシールドに変形して撃つ。

バン! 路地に響き渡る銃声。しかし、弾丸は超の心臓を貫くことなく棒で止められてしまった。


「・・・・・・ルール違反は良くないですよ。アクルさん」


 ――銃弾弾けるレベルの拳法家か、こりゃなかなかやべえな。


「ルールは破るための物だぜ」

超はアクルの言葉を無視して喋る。

「この弾丸のスピードはおよそ時速4100㎞程でしょう。拳銃より多少威力がありますね。まあ、弾けなくはないですが」


 それでは、超は構えを取った。棒をこちらに向けるような構え。

「行かせてもらいます」

流れるように高速で動く超。

「天流独歩」

アクルの動体に六尺棒が鋭く当たる。

「ぐうっ!」

吹き飛んだ。110㎏以上あるアクルの金属の体を吹き飛ばした。

10m以上離れた地点に叩きつけられるアクル。

多少体は麻痺したもの、すぐ立ち上がることができた。


「普通、肋骨が一気に全部折れて終わりなんですがね。死なないにしても動けはしない」

「あの程度で死んでたまるかよ。マシンガンが0距離で撃たれても、死なないし壊れないそんな硬さが、機械ボディのいいとこだしな。壊れちまったらいいとこなしだ」

「しかしあなたからは私に有効な攻撃はできない。攻撃し続ければいつか勝てますよ」

――油断してるな。次近づいたら5万V電撃、0距離でぶつけてやる。

「ではもう一度」

また同じように近づくミン。

「天竜独――」

「喰らいやがれ、中国野郎。5万Ⅴ電撃」


 鳴らされる指。ほとばしる電撃。

電撃は超に直撃した。動きが止まりかける超。

――やったか

「なんてね」

「!?」

「天竜独歩」

また吹き飛ばされたアクル。今回は先ほどの攻撃より、3mほど遠い場所に飛ばされた。

「・・・・・・何で聞かねえ」

「ただ電気耐性を修行でつけているだけですよ。しいて言うなら苓来への愛の力ですね」

「白々しい話だな」

「本当ですよ。苓来の赤く染まっているところ見ましたか?」

「それがどうした」

「あれはですね――」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「本当にここでやっていいニャ?」


 ここはノースストリップ西側。貧困層などが集まり、警察もここには近寄らない。治安は皆さん察しのとおり最悪だ。


「ここは足場や障害物がいっぱいあるニャ。一言でいえば私の独壇場ニャよ?」

「私の苦手なステージではないので、良いですよ」

「それなら――遠慮はいらないニャ!」

そういったと同時に、エルハは瞬間的に加速し、目に見えないスピードで空間を動き回った。

――狙うは、首ニャ。一撃で仕留めるニャ。

「瞬火小判」


エルハは苓来の首を正確に狙いとびかかる。


「!」


 その時、エルハは何か嫌な臭いを感じた。命に関わる危険な臭い。

そこにエルハが危険を察知し、一瞬停止したところを苓来は確実に仕留めようとする。


「やばいニャ!」

反射的に避けるエルハ。空を切るナイフ。


「あなたは早いです。わかりにくいです。しかし私に死ぬ覚悟さえあれば、私はあなたに確実に勝てます」

「ナイフに塗っているのは・・・・・・毒ニャね」

「ご名答。この毒は蠍紅といいます。威力はシロナガスクジラを2㎎あれば10秒で殺します。人間なら0・1㎎で即死でしょう」


エルハの頬に汗がつたる。

「・・・・・・嫌な毒ニャね。格好つけているのが、見え見えの嫌な名前ニャ」

「ネーミングセンスはいいと自負しているんですがね。残念です。この仕事が終わったら、猫殺しとかに名前を変えましょうか」

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