第5話 ドア男、リフォームされる



 俺がドアに転生してから、数年の月日が経った。


 ダンジョンは相変わらず……と言いたいところだが、最近になって、少しだけ様相が変わってきた。


「あるじー、報告ー。ダンジョン、また広がってるー」


「またか。そもそも何で広がってるんだあ?」


「ダンジョンワーム増えたー。あいつら、勝手にダンジョン掘るー」


「何でダンジョンワームが増えたんだあ?」


「知らないー。でも、ここより下の階も増えそうー」


「なに!?」


(なにっ!?)


 俺は、サイクロプスと一緒に、ギィギィと音を立てて驚いてしまった。


 だって、このダンジョンの入り口は地上だ。


 下の階が増えたということは、そこにはこの階層より強いモンスターとボスが配置されることになるのではないか?


「じゃ、じゃあこのボス部屋はどうするんだあ? オレ、移動しなきゃいけないのか?」


「知らないー。あ、偉い魔物ひとがもうすぐ来るってー」


「偉い魔物ひと? ダンジョンモンスター協会の幹部かあ? 仕方ねえ、ついでに聞いてみるか……」


 いつもと違って居眠りもせず、部屋の中でうろうろしているサイクロプス。


 それを見て、俺もそわそわギィギィし始めたのだった。





「ボンソワール! 久しぶりなのねーん」


「で、デュラハン専務! お久しぶりです」


「堅苦しいのねーん。ここでの暮らしはどうなのねーん?」


「ええ、おかげさまで、ぼちぼちやらせてもらってます」


「それは良かったのねーん」


 サイクロプスが会話している相手は、首無し騎士のデュラハンだ。


 だが、俺のイメージしていた黒一色のデュラハンと違って、鎧にも、腕に抱えている兜にも、目がチカチカする芸術的な彩色が施されている。


 マントなんて真っ赤だ。牛が突っ込んで行きそうだ。


「それでねーん、このダンジョン、広がってるのねーん。気付いたのねーん?」


「はい。そのことを聞こうと思ってたんです」


「どうやら、ダンジョンワームが龍脈を掘り当てちゃったのねーん。ここ、もうちょっとしたら上級ダンジョンに変わるのねーん」


 なるほど、龍脈、つまり魔力がたくさん流れているところにダンジョンがぶつかってしまったのか。


「じ、上級ですか? 中級すっ飛ばして?」


「そうなのねーん。でね、この部屋はそのまま、中ボス部屋にするのねーん。大ボスにはグレイトドラゴンくんが派遣される予定なのねーん」


「なるほど……では、オレはここの中ボスに?」


「違うのねーん。チミは小ボスなのねーん。地上出入り口に近い、上層階に移ってもらうのねーん」


(なっ、なんだってーーー!!!)


 じゃあ、これからはサイクロプスを眺めて過ごすことができないのか。


 なんだかんだ気に入っていたんだけどな。


「……立て付けの悪い扉なのねーん。リフォーム業者を手配するのねーん」


 うっ、しまった、騒ぎすぎた。


 デュラハンがゴミを見るような目で俺を見る。


 それにしても、リフォームだと……!?

 俺はどうなってしまうんだ?


 サイクロプスは、一度俺をじっと見ると、再びデュラハンに視線を戻した。


「専務。扉をリフォームするなら、提案があるのですが――」


 サイクロプスの提案は、驚くような内容だった。

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