第5話 ドア男、リフォームされる
俺がドアに転生してから、数年の月日が経った。
ダンジョンは相変わらず……と言いたいところだが、最近になって、少しだけ様相が変わってきた。
「あるじー、報告ー。ダンジョン、また広がってるー」
「またか。そもそも何で広がってるんだあ?」
「ダンジョンワーム増えたー。あいつら、勝手にダンジョン掘るー」
「何でダンジョンワームが増えたんだあ?」
「知らないー。でも、ここより下の階も増えそうー」
「なに!?」
(なにっ!?)
俺は、サイクロプスと一緒に、ギィギィと音を立てて驚いてしまった。
だって、このダンジョンの入り口は地上だ。
下の階が増えたということは、そこにはこの階層より強いモンスターとボスが配置されることになるのではないか?
「じゃ、じゃあこのボス部屋はどうするんだあ? オレ、移動しなきゃいけないのか?」
「知らないー。あ、偉い
「偉い
いつもと違って居眠りもせず、部屋の中でうろうろしているサイクロプス。
それを見て、俺もそわそわギィギィし始めたのだった。
*
「ボンソワール! 久しぶりなのねーん」
「で、デュラハン専務! お久しぶりです」
「堅苦しいのねーん。ここでの暮らしはどうなのねーん?」
「ええ、おかげさまで、ぼちぼちやらせてもらってます」
「それは良かったのねーん」
サイクロプスが会話している相手は、首無し騎士のデュラハンだ。
だが、俺のイメージしていた黒一色のデュラハンと違って、鎧にも、腕に抱えている兜にも、目がチカチカする芸術的な彩色が施されている。
マントなんて真っ赤だ。牛が突っ込んで行きそうだ。
「それでねーん、このダンジョン、広がってるのねーん。気付いたのねーん?」
「はい。そのことを聞こうと思ってたんです」
「どうやら、ダンジョンワームが龍脈を掘り当てちゃったのねーん。ここ、もうちょっとしたら上級ダンジョンに変わるのねーん」
なるほど、龍脈、つまり魔力がたくさん流れているところにダンジョンがぶつかってしまったのか。
「じ、上級ですか? 中級すっ飛ばして?」
「そうなのねーん。でね、この部屋はそのまま、中ボス部屋にするのねーん。大ボスにはグレイトドラゴンくんが派遣される予定なのねーん」
「なるほど……では、オレはここの中ボスに?」
「違うのねーん。チミは小ボスなのねーん。地上出入り口に近い、上層階に移ってもらうのねーん」
(なっ、なんだってーーー!!!)
じゃあ、これからはサイクロプスを眺めて過ごすことができないのか。
なんだかんだ気に入っていたんだけどな。
「……立て付けの悪い扉なのねーん。リフォーム業者を手配するのねーん」
うっ、しまった、騒ぎすぎた。
デュラハンがゴミを見るような目で俺を見る。
それにしても、リフォームだと……!?
俺はどうなってしまうんだ?
サイクロプスは、一度俺をじっと見ると、再びデュラハンに視線を戻した。
「専務。扉をリフォームするなら、提案があるのですが――」
サイクロプスの提案は、驚くような内容だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます