第4話 ドア男、自動ドアになる


 俺がドアに転生してから、はや数ヶ月。


 このダンジョンも知名度が上がったらしく、訪れる冒険者もかなり増えてきた。


 ただし、最初のパーティーのような、ごっつぅ強いパーティーが訪れることはない。


 地域の初級冒険者たちの、登竜門的ダンジョンになっている。



 サイクロプスも、最初の時は即斬られていたが、今はちゃんと「よくぞここまでたどり着いた、オレがここのボスだ」的な口上を述べる余裕があるようだ。


 棍棒を振り回して、適度に冒険者をいじめて、時折やられている。



 ちなみに、ここでパーティーが全滅した場合、どうなるか?


 実はサイクロプスの手下が、ダンジョンの入り口まで転移させてやっているのだ。


 ただし、装備している物以外のアイテムは全て剥ぎ取って、ダンジョンの運営費にしているらしい。


 ダンジョン運営にもそこそこお金がかかるようだ。


「あー、しかしリポップさせられると痛くて仕方ねえんだよな。上級ダンジョンの雑魚だった時より、出世した今の方がブラックだぜ」


「あるじー、食べながら喋るとこぼれるー。スラりんが高脂ジェル症になるからやめてー」


「プヨンプヨン」


「す、すまん」


 だが、相変わらずハーピーには頭が上がらないらしい。


 スライムは少し大きくなって、体液が濁ってきたような気がする。生活習慣病かもしれない。




 俺はというと、蹴破られることにすっかり慣れてしまった。


 斬られたり射られたり燃やされたり凍らされたりしているサイクロプスに比べたら、全然マシなんだろうが、痛いものは痛い。


 そんなある日、俺は一つの特殊能力を手に入れた。


 それは――


「よし、この先がボス部屋だな。情報によると、ボスは一つ目の巨人、サイクロプスだ。せーので扉を蹴破るぞ」


(させるかよ。見よ、俺の秘技!)


「せー……ええ!?」


 ギィィー。

(秘技ッ! 自動ドアだぁぁ!!)


「か、勝手に開いた!? とにかく戦闘準備!」


「ぬわははは、よくぞここまでたどり着いた! オレがここのボス、サイクロプス様だぁっ!」


(ぬわははは、おかげで俺、全く痛くない! 俺、天才!)



 ダンジョンは今日も平和である。



 なお、なぜこの特技が身についたのかは、謎だ。


 俺も蹴られまくってレベルが上がったのかもしれない。


 とりあえず便利だしまあいいや。

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