第3話 ドア男、蹴破られる


 それからさらに数日。


 廊下の方が急に騒がしくなり、俺は視点を切り替えた。


 やってきたのは、四人組の冒険者パーティーだ。


 松明で廊下を照らしながら進んできて、俺の前で立ち止まった。


「みんな、この先にボスがいるに違いない。準備はいいか」


 リーダーと思われる男がパーティーの面々に声をかける。


 全員が頷いたのを見て、リーダーの男は――


 ガンッ!!


 扉を、俺を、思いっきり蹴破ったのだった。


(痛ってぇえええ!!)


 廊下側の目(?)が痛くて開けてられないので、部屋側の視点に切り替える。


 すると、視界いっぱいにボス部屋の壁が広がっていた。これでは何も見えない。


(おい! 雑に扱うなよお!!)


 文句を言っても、ギィギィと音を立てるだけ。


 その音も、すぐに始まった戦闘の音にかき消されてしまった。


(仕方ない……痛いが戦闘も気になるし、廊下側の目を……って、ええ?)


 俺が視点を切り替えた時には、もうすでに、勝負がついていた。


 サイクロプスが、棍棒を振り上げたまま縦にスッパリ両断されて、光の粒に変わっていく。


(ええええええ!? やられちゃったのォ!?)


「ふん、あっけなかったな」


「新しいダンジョンだからって、念のため私たちSランクパーティーが派遣されたけれど……初級ダンジョンってとこね」


「さすがはリーダーですぅー」


「さあ。ドロップ品を持って帰ろう」


 リーダーの男が、サイクロプスの立っていたところに転がっていた魔石を拾い上げると、魔法使いらしき女が転移魔法を展開する。


 床に光る魔法陣が現れて、四人はあっという間にダンジョンの外に転移していったのだった。



(うっ、うっ……サイクロプス……短い間だったけど、お世話に――なってはいないか。でも寂しいよ)


 静かになったダンジョンで、俺が一人でギィギィ喚いていると、床がグネグネと赤黒く光る。


 グネグネはすぐさま大きくなり、赤黒い光は巨人の姿をかたどった。


 光が収束すると、そこには、やられる前と全く変わらない姿形のサイクロプスが、立っていたのだった。


「あー痛え。久々にリポップしたわ」


(えええええ!? 復活した!?)


「まったく、あいつら扉を蹴破りやがって。またギィギィ立て付け悪くなってるじゃねえか」


 サイクロプスは俺を両手で支えて、元の位置に戻してくれたのだった。

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